小麦ふすま抽出物”非アルコール性脂肪性肝疾患への効果を検証『ARs(アルキルレゾルシノール)』

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小麦ふすま抽出物”非アルコール性脂肪性肝疾患への効果を検証『ARs(アルキルレゾルシノール)』

主に業務用として小麦粉を販売している日東富士製粉が、小麦表皮部(ふすま)に多く含まれるポリフェノールの一種、「アルキルレゾルシノール」(ARs)に着目し、研究開発を進めている。 独自の機能性を追求し、製品化への期待が高まっており、市場展開のタイミングも注目される。その研究内容と最新状況をレポートする。

サーチュイン1の活性化に着目

ARsの画像

同社がアルキルレゾルシノールの研究を始めたのは、前東京工科大学教授の今井伸二郎博士らが発表した論文がきっかけだった。
2017年3月2日に英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載された今井前教授らのその研究は、ライ麦や小麦などの植物種子外皮に存在する成分「アルキルレゾルシノール(ARs)」が、老化抑制や生命維持に重要な酵素であるサーチュイン1(SIRT1)を活性化するというもの。

ARsは穀物(小麦・ライ麦等)のふすま(外皮)に多く含まれるポリフェノールの一種で、全粒粉のさまざまな健康効果に寄与する物質の一つと推測されている。

実験では、ショウジョウバエにARsを摂取させたところ、性別に関わらず平均寿命が約10日(44.6日→54.4日)延長することが確認された。

また、この寿命延長効果はサーチュイン(Sir2)に依存的であることも確認された。
ARsはSIRT1の遺伝子発現レベルには影響せずに、構造的に酵素活性を増加させることが示唆された。
これは世界初の発見であり、ライ麦や小麦のふすまの有用性を裏付ける新たなエビデンスといえ、小麦の新たな価値創造を模索する同社にもインパクトのある発表だった。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)への効果

この論文を端緒に、同社のARsの研究開発のチャレンジが始まる。 当初はそのポテンシャルを探るように漠然と健康機能性原料としての可能性を模索していたが、他社もこの分野に乗り出す中で、同社は独自の機能性を追求していくことになる。

実験の様子

そうした中、今井前教授との共同研究を通じ、同社がたどり着いたのは肝機能改善、特にアルコールやウイルスなどを原因としない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)への効果だった。 昨今、人間ドックでASTやALTが高いと指摘される人が増加しているという社会的背景も後押しになった。

主要な研究成果

2018年から2019年にかけ、肝炎モデルマウスを用いた動物実験を共同研究で実施。以下のような良好な結果を得る。

ALT・AST値の低下

NASHモデルマウス(NASH作製用飼料A06071302給餌モデル)を用いた共同研究では、ARsの投与によりALT・AST値の上昇が抑制され、低下することが確認された(下図)。

実験の様子

また、社内モニター試験でも、ARs72mg/日摂取により、ALT値が40以上の人の低下が確認されている。 この効果は、一般的に脂肪蓄積を抑制する効果があると報告されるレスベラトロールでは観察されず、肝炎の症状に特有の作用効果であると考えられている。

肝臓中の脂肪燃焼促進

ARsは、肝臓に過剰に蓄積した脂肪の代謝を促進する。これは、肝機能改善効果の主要なメカニズムの一つと考えられている。

実験の様子

NASHモデルマウスの肝臓組織では、ARs摂取により中性脂肪量が半減し、正常な範囲に収まった。 病理評価でも、対照群で確認された脂肪滴由来の空胞がARs摂取群では抑制されていることが確認された。

作用メカニズム

多様な活用方法

その作用機序は以下の通りに考えられている。

Sirtuin1の活性化
ARsは、「長寿遺伝子」産物であるSirtuin1に直接作用し、その脱アセチル化酵素活性を上昇させる。 その後、以下の2つの経路によると推測されている。
(1)PPARα等のmRNA発現量を増加
その結果、肝組織内での脂肪酸β酸化が亢進
(2)ミトコンドリア機能亢進
ARs摂取により、肝臓組織細胞内のミトコンドリア数が増加することが示唆されている。 これは、PGC-1αの遺伝子発現増強がミトコンドリア数の上昇につながるという知見と一致しています。

Sirtuin1の活性化

ARsは、「長寿遺伝子」産物であるSirtuin1に直接作用し、その脱アセチル化酵素活性を上昇させる。

活性化のグラフ

これにより、エネルギー代謝に重要なPGC-1αの脱アセチル化が促進され、PPARαなどのmRNA発現量が増加し、肝組織内での脂肪酸β酸化が亢進すると考えられている。

肝臓組織中のPPARγ、PGC-1α、PPARα、アディポネクチンの各遺伝子発現量が顕著に増加したことも確認されている。
これら効果は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスを用いた大学との共同研究で確認されている。

数々の特許を取得

研究結果に基づき、同社は「肝臓機能改善用組成物」として特許を取得(特許第7333815号、2023年8月25日)。
また、ALT値および/またはAST値の改善のための組成物としても特許が公開されている。

サプリメントとしての用途

現状では、ARsを油脂と混合し、ソフトカプセルとしてサプリメント化することを想定しており、1日3粒でALT・AST低下効果が期待できる試作品も存在する。

活性化のグラフ

協業相手募りながら機能性表示食品の取得も視野

将来的には機能性表示食品の取得も視野に入れており、特にALT値が高めの人の肝機能改善に関する機能性表示を検討している。
ただし、現状は上記の通りマウスでの基礎データがほとんどであり、ヒトでの本格的な臨床試験(RCT)は未実施。RCT実施へ向けては、研究内容に興味のある協業相手などを募りながら、次のステージとして目指していく方針だ。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率(成人)は9~30%と推定され、少なくとも1,000万人以上の患者数がいるとされる。 そのうち、肝炎(NASH)まで進行する人も100~300万人いると推定されており、ARsには大きな市場ポテンシャルが期待される。
なお、肝機能改善以外の可能性としては、便通改善効果についても基礎データがある。

今後の展望

サーチュイン1(SIRT1)を活性化することも研究に着手する大きなきっかけとなった同社のふすま研究。

あれから8年。研究ではARsが「長寿遺伝子」産物であるSirtuin1に直接作用し、非アルコール性肝疾患の改善に有効なPPARα遺伝子の発現を増強するなど、大きなポテンシャルを秘めていることがわかり始めている。

活性化のグラフ

その研究も大詰めを迎え、同社はいま、この素材の価値を共に高め、社会実装へと導くパートナーとの協業も視野に、付加価値の高い機能性素材として市場への本格展開を目指すフェーズに入っている。

サプリメントとしての効果

ふすまの効用

ふすまの説明画像

小麦ブランはふすまとも呼ばれ、小麦の約15%を占める。ミネラル、ビタミン(B1、B2、E)を多く含み、食物繊維の含有量も高く穀物の中では最も多い。 特に多いのは不溶性の食物繊維。その豊富な栄養素と食物繊維により、さまざまな健康効果が報告されている。

非アルコール性脂肪肝疾患

肝臓のイラスト

アルコールをほとんど飲まない人に起こる脂肪肝。良性の経過をたどる単純性脂肪肝と肝硬変、肝癌へ進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎が存在する。

会社概要

【 日東富士製粉株式会社 】

≪事業内容≫

小麦粉、ふすま等の製造および販売

≪所在地≫

品質保証部
〒143-0001
東京都大田区東海6-2-1

TEL:03-3790-5623
FAX:03-3790-0875
URL:https://www.nittofuji.co.jp/

お問い合わせ

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