ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅡ)

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ドラッグストア研究会 最新USレポート

第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅡ) 

他業態参入組みの強みと弱み 

ウェグマンズ

ドラッグストア業態の人々は、このような他の業態の恐さを十分認識しなければならない。 小売業先進国である米国のケースを見てみると、ドラッグストアで恐いのは価格で勝負する「ディスカウントストア(スーパーセンター、ホームセンターやホールセールクラブを含む)」と、デイリーな商品のワンストップショッピング機能を武器にする「フード&ドラッグのスーパーマーケット」だ。GMSのドラッグストアの取り込みはそれ程脅威にならない。ヘルスケア商品は「緊急のとき手を伸ばせば届くところにあるドラッグストア」というように、身近なところにあってしかもクイックショッピングを可能にするという便利性が必須だ。その意味でGMSは商圏的にも叉クイックショッピングという点でも欠けているからだ。


「30坪スタイルのコンビニエンストア」は、品揃えに限界があること、また自給1500円と通常のパートの2倍弱の登録販売者を複数人常時配備しなければならない経済的負担があることで、コンビニでの薬の需要が高まるのはドラッグストアが店を閉めた夜10時以後~朝9時までの時間帯で、それ以外の時間は人々はドラッグストアで購入するだろうとの理由で余り脅威にならない。叉「100坪スタイルのコンビニとドラッグの融合タイプ」では、店舗サイズの拡大が便利性を失わせることや、登録販売者のコスト上の問題、便利性を強化したドラッグストアとの競争の問題等でその競争力は疑わしい。


CVS/pharmacy

「ドラッグストアにコンビニエンスストアを入れたスタイル」は、便利性の強化と言うことで活躍するだろう。なお、他の業態がドラッグストアのビジネスに手を出したときに起きる大きな問題の一つは、薬剤師や登録販売者が顧客の相談を受けたり書類を書いたりしている姿は、他の部門の従業員に比べて楽そうにしているように映り、店長が不用意に注意を与えたり他の従業員から妬みの目で見られることだ。その結果彼らは辞めていったり、チームワークが取れないことがあるだろう。

 

1) 他業態との戦いに勝利するドラッグストア 

さて、ドラッグストアビジネスに参入してくるこうした怖い他業態に対して、ドラッグストアはどのように戦ったらよいかについて考えてみよう。

a)ヘルス&ビューティーケア(HBC)によるコアコンピテンス確立

ドラッグストアが存在する価値は何か?それはHBCの「専門性」である。それこそがドラッグストアのコアコンピテンスだ。専門性を打ち出すためには、まず調剤の強化が不可欠だ。医薬分業が遅れた日本でも、近い将来必ず調剤薬がドラッグストアの核部門になり、地域住民の信用や信頼を勝ち取る武器になる。叉Ⅰ類、Ⅱ類、Ⅲ類に属するOTCやビューティーケアの充実した品揃え、薬剤師、管理栄養士、登録販売者、コスメティシャンによる優れたカウンセリングなど、「ソリューション機能を高めた専門性」を備えることが重要だ。長期的に見た場合、登録販売者のみで店を運営するというスタイルのドラッグストアは、他の業態にビジネスを奪われていく可能性が高い。

b) ディスカウンターやフード&ドラッグとの差別化の武器になる「便利性」の強化

ドラッグストアがマスマーチャンダイザーやフード&ドラッグと戦う強い武器の一つは「便利性」だ。ディスカウンターは低価格を提供するためにローコストオペレーションが絶対条件であるため、良くない立地や大きな店舗サイズとなり便利性に欠ける。フード-&ドラッグも店舗サイズが大きいために便利性を欠く。ドラッグストアの便利性としては、入りやすく出やすい立地、クイックショッピングを可能にする店舗作り、待たせないレジ、長時間営業、ドライブスルー調剤機能、コンスーマブル商材(コンビニエンスフード&消耗雑貨)の品揃え、ネットショッピング機能、配達サービス、ATM、宅急便取り扱い、各種チケットの販売などのサービス機能の強化が求められる。米国では便利性の強化により、90年代ドラッグストアが1店舗オープンするとコンビニエンスストアが4店舗つぶれると言われた。小売業トータルの売上げが伸びない時代には、他の業態を餌食にすることが成長につながるが、日本でも便利性を強化することによってコンビニエンスストアの顧客を奪うことも考えなくてはならない。

c) 究極の差別化の武器であるホスピタリティの強化

日本の場合ドラッグストアの接客は小売業の中で一番遅れているように感じる。接客サービスの充実を図らない限り、他の業態に顧客を奪われていくのは目に見えている。「価格は一日、品揃えは三日で真似できるが、サービスは一生真似できない」と言われるように、接客サービスは究極の差別化ポイントなのだ。


イ) 売上げ・客数増加に役立つ接客効果
下記の数値は、私が主宰するドラッグストア研究会に参加している企業の協力を得てホスピタリティ向上プログラムを1年間実施した結果だ。各店舗に接客力が一番ある人をホスピタリティプロデューサーに任命し、その人のもとでホスピタリティを上げるプログラムだ。

【ホスピタリティ向上運動一年後の結果】

項 目 結 果
来店客数 1.5倍
売上額 32%アップ
クレーム 1/3
万引き 激減

固定客の増加により売上げも上ったが来店客数も1.5倍伸びた。接客の向上は口こみなどで顧客を増してくれるのだ。


ロ) カウンセリング力
前述の通り、米国の場合どの小売業でもOTCを販売できるが、副作用の顕在化以来、薬剤師の居ない店舗でのOTCの販売は不振である。それは薬が米国人の死因の上位を占めており、消費者の間でOTCも正しく服用しないと怖い存在になると言う考えが普及した結果だ。特に効き目の高いスイッチOTCの普及は副作用も強いためその考えを促進させた。その結果、調剤薬やハーブ・ビタミン・ミネラルなどのオルターナティブメディシンとの飲み合わせを薬剤師と相談しながら購入したいという考えが消費者にある。また米国では、薬剤師に対する信頼度においては独立ドラッグが一番高いが、それは患者と薬剤師の間に信頼できる人間関係があるからだ。実際に独立ドラッグの患者の41%は薬剤師と密接な信頼関係が築かれていると答えている。一方、スーパーマーケットファーマシーでは16%、マスマーチャンダイザーでは僅か12%の患者しか薬剤師との密接な関係が築かれていない。日本のドラッグストアも米国の独立ドラッグのように、患者と薬剤師の間に信頼関係が出来る人間関係を築き、ヘルスケアのソリューションに欠かせないカウンセリング力を高めなければならない。

 
 
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プロフィール

ドラッグストア研究会松村清会長
ドラッグストア研究会
松村 清 会長 (まつむら きよし)
 

Excell-Kドラッグストア研究会(http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)、Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。

日本コカ・コーラ(株)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)を経て独立('90)。慶応義塾大学卒(法学)、ミズリ―バレーカレッジ卒(経済)、サンタクララ大学院卒(MBA)。東京都出身。

CVS

■全米No.1のドラッグストア ウォルグリーン

主な書籍
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 221P
サイズ 四六判
 
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 295P
サイズ 四六判
 
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 212P
サイズ 四六判
 
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 239P
サイズ 四六判
 
目からウロコ 販売心理学93の法則
目からウロコ 販売心理学93の法則
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 247P
サイズ A5ソフトカバー
 
・「ニューシニア(50歳以上)をつかまえろ!!
・「 売上げと利益を運ぶロイヤルカスタマー
・「最強のドラッグストア ウォルグリーン
・「 米国ドラッグストア研究
(以上、商業界刊)。
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バックナンバー
第31回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅣ) 第32回 コンビニは衰退期に入ったのか?
第29回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅡ) 第30回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅢ)
第27回 ドラッグストアの業態進化論 (PartⅡ) 第28回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅠ)
第25回 体の衰えとエイジフレンドリーな対応 第26回 ドラッグストアの業態進化論 (PartⅠ)
第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅡ) 第24回 心のつながり(ハイタッチ)
第21回 お客の欲求段階により大きく変化する品揃え 第22回 「ドラッグストア業態争奪戦」(PartⅠ)
第19回 シニアはわがままを聞いてくれる店が好きだ 第20回 繁盛店はユニバーサルデザインとソフトのバリアフリーの両方を提供
第17回 返報性の法則が大きく働く高齢社会 第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う
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第13回 “Rich Enjoy Discount, Poor Need Discount” 第14回 POPはサイレントセールスマン
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第9回 お客様に好かれる陳列の工夫 第10回 ゴンドラエンドは売り場の華
第7回 有効なマーケティング手法になる音と香り 第8回 顧客の信頼を獲得するなら屋作り
第5回 少子高齢化のマーケティング 第6回 ゴールデンエイジ攻略の鉄則
第3回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅡ 第4回 非計画購買が店舗に売上げ・利益をもたらす
第1回 心理学を利用した利益を上げるレイアウト 第2回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 PartⅠ
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