ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 弟28回 最近の米国ドラッグストア事情 (PartⅠ)【健康美容EXPO】

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業界の第一人者である松村清がドラックストアの事例を交え「売る」極意を公開


第28回



最近の米国ドラッグストア事情 (Part1)

米国消費者購買行動の変化

1)変化する業態の利用度

3s戦略 Specialty専門性 Speed便利性 Service接客性

2008年度の米国の小売業界は未曾有の不況を経験し、多くの業態が苦しんだ。9月の証券会社リーマンブラザーズショック以後、米国の経済は急速に底なし沼のような不況に突入した。その結果、失業者の増加、個人破産の増加、銀行の貸し渋り、消費者の節約志向と小売業にとって大きな逆風が吹いた。前年対比で見た小売業全体の売上げは、10月マイナス5%、11月マイナス8.5%、12月マイナス10.8%と下降を辿った。ナショナルアソシエイションは、米国の2008年度国内総生産は1.3%と小さな成長にとどまり、2009年度はマイナス1.9%、2010年度にやっと2.4%の成長で回復するだろうと予測している。

OTXリサーチ社の調査によると、不況下人々は利用する小売業態を変化させている (表―1)。「コンビニエンスストアの利用を減らす」という人が「増やす」という人より多いのは、人々は近場でのショッピングを好むものの、コンビニエンスストアの価格に抵抗があるからだ。ホールセールクラブも量が多いため、結果として一回当たりの買物金額がかさむのを嫌われている。スーパーマーケットやドラッグストアの利用が増加しているのは、近場での買物と手頃な値段が受けているからだ。ウォルマートに代表されるマスマーチャンダイザーの利用度が高いのは、遠くでもワンストップショッピング機能が高いため、結果としてガソリン代の節約になることと、やはり商品の価格が安いからだ。実際にマスマーチャンダイザーを月に1回以上利用するという人は前年より0.7%増加、55%になった。


 

(表-1)【消費者の業態利用度の変化】

業態

行く回数を増やした(A)

行く回数を減らした(B)

(A)―(B)

コンビニエンスストア
12%
34%
-22%
ホールセールクラブ
22%
31%
-9%
スーパーマーケット
29%
13%
+16%
ダラーストア
33%
19%
+14%
ドラッグストア
36%
11%
+25%
マスマーチャンダイザー
42%
11%
+31%

資料:CDR

2)ショッピングに対する考え方の変化

ドラッグストア経営の教訓

不況による財政上の圧迫は強く、消費者のショッピングパターンを変えてしまった。高額ブランドを購入しなくなったり、購入量は減少し、必要不可欠商品のみのショッピングとなった。30%~40%の消費者はヘルシーフード、フレッシュ野菜やオーガニック野菜の購入を減らし、これが急成長したホールフーズマーケットなどの自然食スーパーマーケットの成長を止めた。69%の消費者はチラシを注意深く見るようになり、82%は店に入るとセール価格商品を探す。65%の人々は価格をより重要視し、多くの消費者がインターネットショッピング情報を買物に利用している。59%の人はより安い価格を求めて、店舗を見てまわる。30%の人々は安い価格を求めて大量購買し、他の人々と分け合っている。34%の人々はクーポンを集め、他の人と必要なクーポンを交換し合っている。このように、いかに安く購入するかに真剣になっている消費者の姿が見て取れる。
また(表-2)の通り、ヘルス及びビューティーに対する消費者の行動が変化している。ベーシックなヘルスケア情報を医者に行かずに集めている人、美容院に行かず自分でヘアケアやネイルケアをする人、医者に行かずにOTCで治療する人、ドラッグストアのインストアクリニックを利用する人、ヘルスチェックのために医者に行く回数を減らす人など、医者や美容院に行かず自分でする人が増加している。これがドラッグストアビジネスの追い風になっている。

 

(表-2)【最近の消費者のヘルス及びビューティーに対する行動】

消費者行動

%

ベーシックなヘルスケア情報をインターネットで集める(診断・治療情報も含む)
52%
美容院などに行かず、ヘアケアやネイルケアを家庭用でする
48%
医者に行かずOTCで治療する
43%
医者に行かず、ドラッグストアなどのインストアクリニックを利用する
40%
ヘルスチェックのために医者に行く回数を減らす
34%
歯医者に行かず美白などのケアを家庭でする
32%

資料:アメリカニズムスタディ

米国の小売業態

経済不況の中、小売業に逆風が吹いている米国において、チェーンドラッグストアは7.1%と一番の売上げ成長を記録した。それに次いでダラーストアやディスカウントストアという価格を武器にする業態が続いた。店舗数の伸びでは逆にチェーンドラッグが一番少なく、わずか217店舗しか増加しなかった。


(表-3)【2008年マスマーケットの売上げ】

業態

売上金額(億ドル)

構成比(%)

前年比(%)

既存店売上成長率(%)

スーパーマーケット
5292
40
+2.8
+1.2
ディスカウントストア
5341
41
+5.2
+2.2
チェーンドラッグストア
2105
16
+7.1
+3.4
ダラーストア
396
3
+6.1
+3.6
合計
13134
100
+4.0
-

資料:ラッチャープレスリサーチ

(表-4)【2008年マスマーケットの店舗数】

業態

店舗数

構成比(%)

前年比(%)

スーパーマーケット
35,350
33.1
+391
ディスカウントストア
19,595
18.3
+589
チェーンドラッグストア
24,355
22.8
+217
ダラーストア
27,645
25.8
+647
合計
106,945
100.0
+1844

資料:ラッチャープレスリサーチ

米国のドラッグストア

1)ドラッグストアにおける消費マインドの変化

米国消費者の節約志向もドラッグストアビジネスに大きな影響を与えている。 下記の通り、調剤薬を必要としている顧客の動向にも変化が現れており、NBからPBにスイッチすることに興味がある人が80%強、ガソリン代を節約できるメールオーダー調剤薬へのスイッチを考えている人が60%強、そして調剤薬からOTCへスイッチすることを考えている人が80%弱もいる。


(表-5)【調剤薬購入者のショッピングマインドの変化】

行動

非常に興味ある

興味ある

興味合計

NBからPBへのスイッチ
51%
31%
82%
メールオーダー調剤へのスイッチ
32%
31%
63%
調剤からOTCへのスイッチ
37%
42%
79%

資料:OTXリサーチ

叉下記の通り、消費者は昨年10月には4月に比べて医者にかかるのをあきらめたり、調剤薬を飲まなかったり、回数を減らしている。

(表-6)【消費者のヘルスケアに関するマインド変化】

消費者行動

2008年10月

2008年4月

必要なヘルスケアを先延ばしするか又はあきらめる
36%
29%
するようにいわれた医療検査又は治療をあきらめた
31%
24%
調剤薬もらわなかった
27%
23%
薬の飲む回数を減らした
22%
19%

資料:OTXリサーチ

2)2008年度北米ドラッグストアの実績

ドラッグストア

そのような厳しい環境下でドラッグストアは比較的好調だった。カナダを含む北米のドラッグストアトータルでは7.0%の成長(2815億ドル)を記録した。チェーンドラッグは7.1%の成長(2105億ドル)で、売上げ構成比では約75%、店舗数構成比では54%であった。
チェーンドラッグの既存店舗の売上げは対2007年度で3.4%成長した。既存店舗が売上げを伸ばすことは非常に健康的な成長を示している証拠だが、残念ながら不況の影響で2007年度の既存店舗の成長率5.6%と比較すると成長率を2.2ポイントも下げてしまった。チェーンドラッグの坪当たり売上げは20646ドルと若干前年を下回った。税引き後の純利益は1.6%であった。チェーンドラッグの店舗サイズは321坪で前年より8坪減少し、大型化に歯止めがかかったように見られる。チェーンドラッグの中でもローカルドラッグは健闘した。それは地域の顧客を名前で呼び、家族中のヘルスケアにお手伝いするという密着手法が顧客に好まれたからだ。多くのローカルドラッグは将来に向けて出店、改装、新しいテクノロジーの導入を図っている。
不況、調剤利益率の減少、そして大手小売業との競争激化という1・2・3パンチが独立店(10店舗未満の企業)を襲ったが、それでも独立店は大活躍した。売上げ構成比25%、店舗数構成比46%だが、売上げで6.8%(710億ドル)の成長を記録した。独立ドラッグの50%以上の店は人口2万人以下で、ナショナルチェーンが興味を持たない地域で展開している。またマッケソン等卸からのサポートで近代的な機器の導入、オペレーションの効率化が進んでいる。それでも独立店の20%の店は赤字で経営しているといわれている。
店舗当たりの売上げを見てみると、チェーンドラッグが8.6百万ドルで前年比0.5百万ドル、独立ドラッグが3.6百万ドルで前年比0.4百万ドルと、それぞれが売上げを伸ばした。店舗数で見ると、独立ドラッグは825店舗減少した。ウォルグリーンやCVSの出店戦略も控え目になり、且つ他のドラッグストアの出店が非常に少なかった結果、チェーンドラッグはわずか217店舗の増加で、トータルドラッグストアの店舗数では608店舗減少した。



(表-7)【消費者のヘルスケアに関するマインド変化】

項目

実績

対2007年度(%)

チェーンドラッグ売上げ
2105億ドル
+7.1
独立店ドラッグ売上げ
710億ドル
+6.8
ドラッグストアトータル売上げ
2815億ドル
+7.0
チェーンドラッグ売上げシェア
74.8%
+0.1ポイント
独立店ドラッグ売上げシェア
25.2%
‐0.1ポイント
チェーンドラッグ店舗当り売上げ金額
8.6百万ドル
+0.5百万ドル
独立ドラッグ店舗当り売上げ金額
3.6百万ドル
+0.4百万ドル
チェーンドラッグ平均坪当り売上げ金額
24660ドル
‐72ドル
チェーンドラッグ既存店売上げ伸張率
3.4%
-2.2ポイント
チェーンドラッグ税引き後純利益率
1.6%
-0.1ポイント

資料:CDR

(表-8)【消費者のヘルスケアに関するマインド変化】

項目

実績

2006年度対比

チェーンドラッグ店舗数
24355店舗
+215店舗
独立店ドラッグ店舗数
19785店舗
‐825店舗
ドラッグストア店舗数トータル
44140店舗
-610店舗
チェーンドラッグ店舗数シェア
53.9%
+1.3ポイント
独立店ドラッグ店舗数シェア
46.1%
‐1.3ポイント
チェーンドラッグ平均売り場面積
321坪
-8坪

資料:CDR

2008年度の米国ドラッグストアランキング(表-9)をみてみるとCVSはPBMのケアマーク社を買収して企業トータルでは最大だが、ドラッグストアビジネスのみでいうとウォルグリーンが一位の座を守った。トップ3以外のチェーンドラッグは規模が極端に小さくなっているが、これは中小規模でも顧客を大切にすれば勝ち残れることを証明している。また薬卸が展開するフランチャイズチェーンのヘルスマート(マッケソン)とメディスンショップ(カーディナルヘルス)がトップ10に入り活躍している。独立ドラッグの立て直しを卸が主導して行ったが、日本でも参考になる例だ。

(表-9)【2008年度北米ドラッグストアランキング】

業態

売上げ(ドル)

前年比(%)

店舗当り売上(百万ドル)

店舗当り売上 (百万ドル)

店舗数

 

1) Walgreen
590.3億
9.8

8.9

21.6億ドル
6453
2) CVS Caremark
489.9億
8.7
7.7
33.4億ドル(3.8%)
6981
3) Rite Aid
262.9億
8.1
5.3
‐29.1億ドル
4901
4)Shoppers Drug Mart
76.1億
11.1
6.6
457百万ドル(6.0%)
1149
カナダ
5) Katz Group(Canada)
63.8億
6.3
3.4
NA
1900
カナダ
6) Health Mart
49.0億
25.6
2.6
NA
2002
卸店マッケソンのFC
7) Jean Coutu(Canada)
27.1億
‐71.3
7.8
-728百万ドル
348
カナダ
8) Medicine Shoppe Int’l
24.0億
NA
2.8
NA
1350
卸カーディナルヘルスのFC
9) Duane Reade
17.7億
5.2
7.0
-72.8百万ドル
252
10) London Drugs
13.8億
7.1
2.0
NA
69
カナダ
11) Uniprix(Canada)
13.6億
NA
3.5
NA
387
カナダ
12) Marc Glassman
12.1億
NA
20.2
NA
60
ディスカウントストアも展開
13) USA Drug
971百万
NA
6.3
NA
153
14 )Kinney Drugs
711百万
6.6
8.0
NA
90
15) Kerr Drug
628百万
3.4
6.2
NA
102
16) Discount Drug Mart
526百万
NA
7.6
NA
69
17) SavMor Franchaising
400百万
NA
4.8
NA
84
18) Bartell Drug
386百万
NA
7.0
NA
55
19) drugstore.com
366百万
8.0
NA
ネットドラッグ
20) Navarro Discount Pharmacies
350百万
NA
12.1
NA
28

資料:CDR

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Information
松村清レポート
ドラッグストア研究会 松村清会長

Profile

Excell-Kドラッグストア研究会
( http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)
Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。


ウォルグリーン写真

■レポートの中で事例として登場する「ウォルグリーン」は全米No.1のドラッグストア


 
 
 

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