この人に聞く 健康・美容業界のキーマン NPO法人日本テクニカルデザイナーズネットワーク協会 (JTDNA)  窪 千恵子

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2009年9月より消費者庁が発足する。その名のごとく消費者の視点に立った省庁で、健康美容業界でもその表記や広告に対する締め付けが「一層厳しくなるのでは」と戦々恐々とする
企業も少なくない。不要にうろたえないために、どう処すべきなのか。NPO法人日本テクニカルデザイナーズネットワーク協会(JTDNA)で医療・薬事担当のスーパーバイザーとして活躍する窪千恵子氏にその“心構え”を聞いた。

消費者庁設立にうろたえないための心構え 

「売らんかな」のひと言で会社が消滅することも

――昨今、ことに健康美容業界では表記に関する摘発事例が目立ちます。消費者庁設立との関連を指摘する声もあります。

無関係ではないでしょうが、基本的には必ずしも関係があるとは思いません。というのも表記に関してはすでに数年前から厳しくなっていますから。むしろ、摘発されるような表記をする企業が増えたことが最近の取り締まり強化に繋がり、その結果、相次ぐ摘発につながっている側面が強いのではないでしょうか。

窪千恵子写真

――確かにここ数年、健康美容業界は芳しくない状況が続いています。その結果、表記や広告において「売らんかな」の過剰な表現に走りがちになっているのかもしれませんが、ある意味仕方のない気もします。

「売らんかな」で書いた、たったひと言で会社が潰れることもあります。例えば2002年に施行された健康増進法でいえば、企業にその意図がなくとも消費者がその食品の広告を見て効果を医薬品と誤認しただけでも罪に問われます。法律で言えば、それ以外にもJAS法、食品衛生法、薬事法、景表法、特商法などが健康食品の場合、関わってきます。売りたいのは分かりますが、そういった法律に準拠するのは当然ですし、しなければ当然痛い目にあうことはしっかりと認識しておく必要があります。

 

健康食品を正しく売るためのキモとは

――極論をいえば消費者の解釈の仕方によって、企業が罪を問われることもありうる中で、消費者保護を使命とする省庁の誕生となれば、企業側に戦々恐々としないようにとするほうが難しい。

窪千恵子写真

健康食品を売ろうとするから難しくなるんです。健康食品といっても明確な分類はなく、正式には食品です。ですから「食品を売る」という本質を見失わずに売ればいいだけのことです。問題が起こるのは、食品であるにもかかわらず「痩せる」とか「肌がきれいになる」などの機能を軸に訴求するからです。ある食品を摂取することで、結果的に痩せたりキレイになったりすることはあるのかもしれませんが、それは、「食べる」ということの結果の一要素に過ぎません。そう考えれば、機能を全面に出して食品を販売することが、消費者にとってかえって不親切であるということが分かるのではないでしょうか。

 

――そうは言ってもやはり企業としては消費者に対し、機能を訴求するほうが、その懐を刺激すると考えるのも無理はないと思います。

本当にその機能が消費者に強い訴求力があり、売上にも貢献できると確信しているなら、しっかりとエビデンスを取ればいいと思います。極論をいえば、医薬品や特定保健用食品にしてしまえばいい。食品と医薬品の間には明確な線引きがあるワケですから。でも、実は皆さんが思っている程、消費者はそんなところは見ていないんですよ。

表記でナーバスにならないための心構え 

――ではどうすれば「正しく売れる」表記ができるのでしょうか。

窪千恵子写真

食品に限りませんが、モノを消費者に対して市場に出すにあっては必ずそこに「製造者の想い」があるはずです。なぜその製品を作ったのか、どれだけ手間をかけ、どこにこだわっているのか…。そうしたことを5W1Hを整理し、詰め込んでいくんです。消費者に対するアピールですから履歴書を書くイメージだと思えばいいかもしれません。言葉は下手でも気にすることはありません。かえってその方が頭に残ったりするものです。コンビニのおにぎりよりもお母さんのおにぎりの方がおいしいじゃないですか。そこには手のぬくもりがあるし、愛情を感じられるからだと思います。そういう意味では、消費者の顔を思い浮かべながら、製品への想いを丁寧につむいでいけば、必ずしっかりと伝わる言葉が完成するハズで、その表記の方が消費者に安心を与え、購買意欲は上がるんです。

――窪さんはそういった取扱説明書や広告などの販売ツールの表記について法などと照らし合わせてチェックすることをビジネスにして起業、IDPコーポレーションを立ち上げられたんですね。

窪千恵子写真

ベースはPL(製造物責任)視点からのアドバイスになりますが、やはり最近は薬事法関連のお問い合わせが急増していますね。元々医療従事者として医療機関で勤務しており、創薬にも関わっていた経験上、薬事法などの関連法規も勉強したのでご対応していますが、本来の「PL」のあり方と「法律対策」とは本質が違うと私は捉えています。製品を取り巻く環境には色々な法律が関わっていますが、要は国や法律が求めているのはPL、いわゆる「製品を製造販売する側が、いかに使用者に対して責任を全うするか」という「事業者コンプライアンス」の観点です。その要に「表示による説明」があり、ここに取扱説明書や広告がどう対応するかという事業者側の姿勢が問題になっているのだと。たとえば健康食品において「安全情報(摂取してはならない人など)の不表示」をよく見かけます。普段は何ごとも起こらないでしょうが、そこにもし「何らかの事故」が起こり、拡大損害が起これば、「安全性を表示しなかった(=表示欠陥)ことに起因するPL事故」の扱いとなり、事業者責任が問われる可能性もあります。このようにいくら薬事法関連商品であっても「薬事法対策」だけでは表示対策はできません。ですから、コンサルにあたっては単なる法律対策ではなく、「事故予防」という視点を中心としたアドバイスをするようにしています。

――表記コンサルの立場から表記に対し、うろたえない処し方をアドバイスするとすればどんなことになるでしょうか。

まずいえることは、どんなに時代背景が変わっても「正しい説明=事故予防の要」ということは不変であるということ。そして、法律対策はできないということ。それらを踏まえたうえで、一番心掛けてほしいのは難しい法律文章や法律条文ではなく「使用者側の視点」です。その上で、「正しい表記」の意味や「表示の読み手は素人」であること、「薬事法関連製品はリスクが高い」ことを念頭に置き、いま一度「消費者視点の表示」を行うことの重要性について認識を改めていただきたいと思います。

うろたえないために押えるべきたった3つのこと 

――リスクの高い薬事法関連製品についてもう少しアドバイスをお願いします。

薬事法は、いうまでもありませんが医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器に関わる製品に関する法律です。ところが最近は、社会情勢や市場動向などにより、行政では「身体に影響を及ぼす」と思われる製品には全て薬事法が関与するという認識に変わりました。それに伴って、表示、特に広告は非常に厳しい規制がおかれるようになりました。例えば、単に運動を補助するための健康器具などもひとたび「体の機能構造に変化を及ぼす(=医療機器の定義)」という内容の広告をした途端、その器具が法律上「医療機器」とみなされ、医療機器承認の有無、製造販売承認などの有無の確認が行われ、未取得ならば「無許可販売」となり、排除命令等の法的制裁が行われるようになりました。平成19年の東京都福祉保健局主催の「医薬品広告講習会」では、むくみを予防するストッキングや骨盤位を矯正する靴の中敷等が「医療機器」と判断された事例も紹介されています。これまでは薬事法の適用外だった商品までが広告表記ひとつで薬事法の適用となる例がでてきています。

――消費者視点がキモとは分かってはいてもこのような状況では、さすがに混乱してしまいます。

確かにこれまで何の問題もなかった広告が法的制裁を受ける可能性を帯びるワケですから、現場では混乱が起こっています。特に広告を制作する印刷会社やデザイン会社はいままでクライアントである製造メーカーのオーダー通りに広告を制作しても、ある日いきなり制作責任を問われる可能性が出てきたわけで、まさに寝耳に水。混乱するのも無理は無いかもしれません。

――いろいろな締め付けが厳しくなることはあっても緩くなることはないであろう消費者庁の設立は間近に迫っています。

窪千恵子写真

どうしても混乱しがちですが、実は「薬事法」の意図する目的はたったひとつ。「薬や医療機器でないものを薬や医療機器として製造販売してはならない」。つまり、体への安全性が確認できないものを医療用として製造・販売してはいけない、これだけです。そして、「医薬品等適性広告基準」の意図する目的も次の2つだけ。「誇大広告、虚偽広告、誤認広告を行ってはならない」「安全性が確立されていない内容については広告してはならない」。これらを念頭に、最初に言ったように製品の「売り」を見つけ、相手に伝わるキャッチコピーを作る。あるいは作った後に上記3つとすり合わせ確認する。とにかく、あまり周囲に惑わされず、自ら法律や基準に抵触してしまう体制をつくらないことが大切です。どんなに製品が売れても、会社が潰れたら意味がない。「その一言が運命の分かれ道」にならないようにしていただきたいですね。

プロフィール

NPO法人
日本テクニカルデザイナーズ
ネットワーク協会(JTDNA)
薬事担当スーパーバイザー
窪 千恵子 (くぼ ちえこ)

プロフィール

昭和60年横浜高等教育専門学校医学技術学科を卒業、同時に臨床検査技師国家資格に合格。臨床検査技師として約20年間、総合病院、クリニック、検診センター、検査センター、製薬関連企業等にて上記技術者として従事。その間、超音波検査士・診療情報管理士・医療事務資格などの医療関連資格も取得。平成11年、JTDNA理事長の渡辺吉明氏と出会い、JTDNAの前身「テクニカルデザイナーズネットワーク」にて「PLアドバイザー」としてPL勉強会等を開催、消費者や製造・販売側への商品欠陥事故予防策の重要性の教育に注力。平成17年に法人(有限会社IDPコーポレーション)を設立。平成19年JTDNAスーパーバイザー認定。平成20年JASDAM(日本ダイレクトマーケティング学会)正会員登録。医療関連表記コンサルティング業務を開始。平成21年JTDNA特別会員に就任。現在に至る。

会社概要
jtdna

JTDNA : 内閣府認証NPO法人
日本テクニカルデザイナーズ
ネットワーク協会

URL
http://www.jtdna.or.jp/

製品事故(製品が原因の事故)を予防するために、デザイナー、技術者、弁護士、医療従事者、損害保険プロ代理店、主婦、学生ほか、多方面で活躍されている人々が集まり、製品事故予防対策の普及啓蒙活動を行なっている団体。2002年4月に構築が開始されたテクニカルデザイナーズネットワークを2006年4月にNPO法人化した。

消費者庁

消費者・生活者視点に立つ行政への転換を意図し、消費者行政を一元化するために新たに創設される行政機関。商品、金融などの取引、製品・食品などの安全、表示などの消費者の安心安全にかかわる問題を幅広く所管することを目指す。関連法案は、景品表示法、JAS法、健康増進法、無限連鎖講防止法、PL法、特定電子メール法など。

セミナー情報
サプリメントイメージ

JTDNA 薬事法関連商品 表示対策セミナー
(〜広告を中心に)

●日時:9月11日(金)13:30〜16:00
●場 所:板橋区グリーンホール
(東京都板橋区栄町36−1)
●講師:窪千恵子(JTDNA 医療・薬事担当スーパーバイザー)
●受講料:3,000円/名(テキスト代別)

セミナーの詳細はコチラ>>

 
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バックナンバー
第15回 新潮流、アウトドアフィットネス(R)の可能性
第13回 消費者庁設立にうろたえないための心構え
第14回 激動のドラッグストアが向かう進路とは
第11回 現役東大生でサプリメント会社社長の戦略とは
第12回 なぜ日本ではサプリメントが有効に機能しないのか
第9回 淘汰が進むエステ業界の現状と復調へのシナリオ
第10回 医薬品のネット販売はなぜ規制されるのか
第7回 ネットと連動した健康データ管理ビジネスの可能性
第8回 医療現場と健康食品の融合の先にあるもの
第5回 進化するネット通販の課題と現状
第6回 安全性第三者認証制度は業界に何をもたらすのか
第3回 ”風評被害”を未然に防ぐマスコミ戦術とは
第4回 一気に業界No.1になる顧客獲得スキーム
第1回 健食企業とおもちゃメーカーが異色の合体!
第2回 閉塞感を打破する「仕掛け」の極意とは
 
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