この人に聞く 健康・美容業界のキーマン 株式会社タニタヘルスリンク 坂井 康展

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医療費抑制の観点からセルフメディケーションに関連したビジネスが活発化している。特にIT技術を絡めた健康データ管理ビジネスは、さまざまな可能性を秘めており、多くの事業者が参入。百花繚乱状態となっている。はかるパイオニア企業・株式会社タニタの計測データ活用を目的とした新事業会社、株式会社タニタヘルスリンク社長・坂井康展氏にその展望や可能性について聞いた。

ネットと連動した健康データ管理ビジネスの可能性 

健康データ管理ビジネスの現状

――健診データ、より身近なものでは体重計などでの測定結果が、IT技術の進歩などで容易に管理できる環境が整いつつあります。昨年4月にスタートした特定健診・特定保健指導(メタボ健診)では、健診後の“改善”が必要となり、そういった環境を後押しする状況も出来上がりました。いわゆる健康データ管理ビジネスも活発になっていますが、現状をどうみていますか。

坂井康展氏写真

健康データを管理するビジネスは確かに活発な状況にあると思います。2006年には、医療費高騰の要因となっている生活習慣、健康管理などの課題に取り組むための業界団体が設立されるなど、大きな動きも起こり始めています。ただ、まだまだ確立されたジャンルではなく、思ったほどはうまくいっていない、というのが現状といえると考えます。そういう意味では、全体的に模索しながら前進している状況といえるのではないでしょうか。

 

――こういった状況の“追い風”になると思われていたメタボ健診は、蓋を開けてみれば、それほどでもなく、静かなスタートとなりました。

坂井康展氏写真特定健診・特定保健指導の試みに賛同し我々も事業展開しておりますので、今年度の特定保健指導まで進んだボリュームをみると少し残念に思っております。
その原因として、健診データの処理の滞りや企業の様子見姿勢などを指摘する声も聞きます。原因がどうあれへルスケアという、医療領域の手前を生業にしている我々は、今後もこの事業を続けていきたいと考えております。ただ、その過程においてひとつ大きな乗り越えなければならない山があると考えております。個人が自らの費用負担で受ける健康支援プログラムとは異なり、自治体や企業からいわば強制されて受ける特定保健指導は、対象者の改善への動機レベルや継続するための環境が異なるため、結果として効果と費用にバラツキが生じ、事業として計算しにくい部分があると考えております。
「タバコや間食をやめる」など文字通り生活習慣に根ざした行動を変えるためには、初期の動機付けと継続サポートをいかに確立するか、またそのサービスレベルをいかに一定に保つか、それがこのビジネスを軌道に乗せるキモになると思っています。

継続支援、サービスレベルの維持がポイント

――タニタには、健康データ測定ツールとして昔から日常生活に溶け込む体重計メーカーとしての強みがあります。貴社ではそれをどう活用し、ビジネス展開するのでしょうか。

体組成計 写真

タニタは50年前にヘルスメーターの製造を始めて以来、機器の進化とともにはかれる項目がどんどん増えました。体重に始まり、体脂肪率、推定骨量、筋肉量、内臓脂肪…など、ハードの発展に伴い測定項目は増えました。しかし一方で、計測した値がどういう意味を持ち「はかった後どうすればいいのか」にこたえるには、現在の機器本体の表示部分や購入時の同梱資料では伝えきれないという新たな課題が出てきました。その課題を解決するべく、WEBを活用した正しい健康情報の提供や、必要に応じて管理栄養士などの専門家によるアドバイスを提供していくために誕生したのがタニタヘルスリンクになります。注力しているのは、計測データを簡単に蓄積できる仕組みづくり。そして計測データの価値とクオリティを進化させること。この2つを社会に根付かせていくことで、
例えばトレーニングやダイエットに頑張っている自分を知ることができ、また、遠隔地の人ともつながり、専門家のアドバイスを受けることが可能になると考えています。さらにいえば、赤ちゃんから高齢者まで幅広い層の人々の一生涯の健康状態をモニターし、あらゆるシーンで健康をサポートできればと思っています。

――具体的にはどういうアプローチで測定データ管理の定着を図るのでしょうか

タニタとしては3つ考えています。①正しく②楽しく③簡単にです。「正しく」はいくらやっても間違ったダイエット方法では効果がありません。しっかり効果を実感できる正しい方法へ導く工夫をしています。「楽しく」は、そうでなければ続きません。ですから弊社ではイベントと連動させるなど、やる意義作りなどもサポートしています。「簡単」はデータ入力等が困難であったり煩雑だと継続の障害となります。通信機能を持つ測定機の開発などで体重計に乗ると同時にデータ転送されるツールなども用意しております。

――そういったものが集約したサービスが「からだカルテ」ですね。

通信機能を持つ測定機 写真

そうです。「健康グラフ日記」では体脂肪や筋肉量などさまざまなからだのデータを簡単な操作で見やすくグラフ化しています。からだサポート倶楽部は、有料サービスとなりますが、タニタのこれまでの健康管理のノウハウと実績に基づく独自の個別指導プログラムです。
運動・栄養の専門家にオンラインでマンツーマン支援を受けられます。ダイエットシミュレーションでは、基礎代謝や食事・運動情報を基にダイエット実現までの道のりをシミュレーションします。貯まると現金などとの特典と交換できるポイントプログラムを用意し、モチベーションを高める工夫も施しています。データ入力は、からだカルテ対応の計測機器ならリレーキー、レシーバー、携帯電話など介し、非常に簡単に完了します。

将来像を描きづらいのが醍醐味

――サービススタートからこれまでのからだカルテの状況はどうでしょうか。

坂井康展氏写真

まだまだ認知度が足りない部分もあり、数字としてはもう少し頑張らねばならないというのが現状です。
とはいえ、有料サービスの個別指導プログラムは順調に伸びており、今後は、よりキメの細かいサービス、例えば美しくやせるプランとかやせた後のキープを支援するプラン、あるいは特定の疾患に対応したプランなど、プログラムの付加価値を増すなどし、1人でも多くのユーザーの期待にこたえられるようサービスの幅を拡げていきたいと考えています。

――貴社ではこういったサービスを拡充するにあたってオープン化戦略をとっています。
その狙いはどこにあるのでしょう。

坂井康展氏写真

ひとつはハード面でのアライアンスの場合、ウチにない通信機器があれば広く求め、よりユーザーにとっていいものを提供ができるということ。もうひとつはソフトの面では楽しい部分を補強するにはやはり、
ウチにないものを持ったところとアライアンスすることが、より大きな相乗効果が期待できる、ということになります。
すでにいろいろな企業との提携が実現していますが、現在も水面下でいくつかの話が進んでいます。とにかく、まだ確立されていない部分も多いジャンルですし、固定観念にとらわれず、幅広くいろいろなジャンルの企業とのアライアンスを模索していきたいですね。

――最後にこのビジネスの可能性も踏まえ、その理想の姿をどう思い描いているのか
お聞かせ下さい。

坂井康展氏写真

日々進化する分野で描きづらいのがこのビジネスの難しさだと思います。ですが、裏を返せばそれが醍醐味でもある。1年後、2年後にはどんな形になっているか想像しづらいですからね。
そうした中で、やはり健康データの管理が当たり前の世の中となり、その上でいつでもどこでも誰かが見守っている社会、映画などのシーンでよく見られる近未来のような社会構築の一助となるのが、このビジネスとしてひとつの到達点でしょうか。
そのためにはまず、からだカルテをより多くの方に知ってもらい、使ってもらい、進化させていくことが重要だと思っています。

プロフィール

株式会社タニタヘルスリンク
代表取締役社長
坂井康展 (さかい やすのぶ)

プロフィール

1974年、広島県生まれ。
ニューヨーク州立大学経営学部卒業後、
外資系コンサルティング会社のアクセンチュア株式会社にて6年間コンサルティング業務を経験し、2006年に株式会社タニタに入社。

タニタでは、新規事業推進部にて、計測機器+情報サービス+健康指導サービスをセットにした健康のトータルソリューションサービスの企画立案、構築、事業化を推進し、2007年より「からだカルテ」(ブランド名)を開始。

2008年4月より株式会社タニタヘルスリンク代表取締役社長に就任。

会社概要

【株式会社タニタヘルスリンク】

URL
http://www.tanita-thl.co.jp/

タニタのさまざまな測定機器で測定したデータを多角的に活用するため、2007年3月に設立。WEBシステムおよびソフトウェアの開発・販売、健康機器・美容機器の製造・販売およびリース、インターネットによる情報サービス事業および通販事業、市場調査、宣伝および広告業を事業内容とする。資本金5000万円。従業員数25人。

コンティニュア・ヘルス・アライアンス
医療費高騰の要因となるライフスタイル、健康管理、人口統計学的傾向のなどの課題に取り組むために2006年に設立された業界団体。国内ではタニタのほか、インテル、エヌ・ティ・ティ・ドコモ、シャープ、パナソニック、オムロンヘルスケア、東芝など14社が加盟し、世界177社が参加する。2009年2月に設計ガイドライン第一版が完成し、実用化へ向け動き始めた。

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健康データ管理ビジネス
携帯電話で体脂肪や体重などの計測データを管理するサービスや食生活をデータ管理するソフト、最近ではWii Fitの計測データを活用したメタボ指導システムが開発された。よりスムースに健康データ管理を実現し、そして継続させることに工夫したサービスが続々と登場している。日々の生活習慣のデータ管理は、医療シーンでの効率性をもたらすだけでなく遠隔医療への応用も図れるなど、社会インフラとしての大きな可能性も秘めており、参入企業は後を絶たない。

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