この人に聞く 健康・美容業界のキーマン ケンコーコム株式会 藤江 泰弘

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萎縮する健食市場の中で、そのウエイトを着実に増すなど成長を続けるネット通販。ショッピングの一形態として市民権を得る一方で、「対面」ではないということを理由に医薬品のネット販売の規制について検討されるなどの問題も起きている。この問題で行政側と徹底抗戦する健康美容関連のEコマースメガショップを運営するケンコーコム株式会社のバイヤー・藤江泰弘氏にネット通販市場の2008年を振り返ってもらいながら、その最前線の状況を聞いた。

進化するネット通販の課題と現状 

情報量が多いほど売れやすい傾向顕著に

――食品偽装問題、法規制強化などさまざまな逆風が吹きつけ、健食市場になかなか勢いがつきません。2008年のネット通販市場を振り返り、風当たりはいかがでしたか。

今年に限ったことではないですが、2年前のアガリクス問題以降、芳しくはない状況にはあります。ただ、ネット通販市場についていえば、厳しいながらも伸びは止まっていません。要因としては、利用者自体が増えていることがひとつ。そしてそれに対応するサービスやサイトが、充実してきていることなどが考えられます。

――そういう意味では、じっくりと情報を確認できるネットの特性が、厳しくなった消費者の目には、プラスに働いたという感じになりますか。

藤江泰弘氏写真

確かに、情報量の明瞭な商品ほどが買われやすいという傾向が強まっています。例えば、ちょっと極端ですが同一内容の商品で1万円と1,000円の商品に対する情報量が同じであった場合、安い1,000円の方が買われる。けれど、不明瞭な商品と生産地・製法など明記されている商品では、高くても明瞭なものを選ばれる方がいます。いま、消費者は食品に対して不安感をもっています。それを緩和するものとして、消費者はトレーサビリティがあったり、製法・衛生管理情報など、なにかその商材が信頼できる「根拠」を求めています。それがあることによって爆発的に売れるとまではいきませんが、しっかりと情報を提供することが、売れるための「基準」になりつつあります。実際、弊社へ出品するメーカー様の商品もそういったものが増えています。そういう全体的な情報感度の高まりの副産物なのか、その延長線上の出来事といえるのか、今年はとりわけ自主回収が多かった一年であったと感じています。

メタボ、トクホ関連が右肩上がり

――2008年、ネット市場で目立った商材はどんなものがありましたか。

やはり安全志向のせいか、認知度のある素材が安定していました。ビタミン、ミネラルなど、何のために摂るのかが広く理解されている商材はよく出ました。同じ流れでトクホ関連の商品も売れましたね。コーヒーやお茶の形状のものなど、日常生活で手軽に摂取できる、より食品に近いタイプのものが人気でした。傾向としては、ソイジョイに代表されるように、生活習慣の中でいつでもどこでも手軽に栄養成分を摂れるものが支持を集めました。今後もこの傾向は続くのではないでしょうか。新素材では、素材認知度があがってきたフェルラ酸、血栓溶解が期待されるルンブル関連のサプリメントが、メタボ健診のスタートもあってか、右肩上がりでした。

――薬事法、そしてネット通販市場においては、いわゆる体験談の使用についてもしばりがきつくなるなど、発足当初のガードの緩さを考えると健食通販におけるその特性の生かし方が“高度化”しつつある気がいたします。
藤江泰弘氏写真

弊社は11万を超える商材を扱うまでになりましたが、これまで以上に商品についての情報をしっかりとヒアリングを行っています。出品している商材にメーカー様が自社で書き込みができるサービスもあり、その利用の促進にも力を入れるようにしています。また、今年8月には、「ケンコミ」というサービスをスタートしました。これは消費者が使用した商品の感想などを書き込めるサービスですが、質の高い情報が多く、順調に推移しています。いかに商品に関する情報をしっかりと発信できるか。食品である健康食品は当然、効能効果は謳えませんが、そうでない部分、例えば商品へのこだわり、あるいはどんな状況下で生産されているのか、そういった情報をいかに正確にしっかりと発信できるか、そういうことが、いままで以上に重要な時代になってきたとは思います。

医薬品のネット販売問題にはしっかりした議論必要

――情報を伴った販売という点では、やり方次第ではリアルの店舗よりアドバンテージもあるネット通販。とはいえ、「対面」ではないという、いかんともしがたい店頭との違いがあります。貴社は医薬品のネット販売においては、行政サイドと徹底抗戦しています。


ケンコーコム サイト画面

医薬品に限らず、食品などにおいても同様に口に入れるものを扱う事業者として、消費者に安全に商品を供給することが最重要であるのはいうまでもありません。これはリアルの店舗でも変わらないと思います。医薬品は副作用のリスクを伴うものですから、ネットでの販売においても、もちろん情報提供を徹底する、アンケートによる服薬チェック機能を設けるなど出来うる限りの策を講じています。弊社では薬剤師で構成された専門チームの管理のもと、現在も医薬品の販売を行っていますが、それを「対面」ではないという理由だけで規制されかねない状況です。ネット販売のメリットに、消費者に継続的かつ普遍的に情報を提供できることがあります。また、遠隔地の方でも手軽に薬を取り寄せられるという部分があります。多忙だったり、体に不自由があるなどの理由で、店頭に出向くのが困難な消費者もいらっしゃいます。数多くの消費者に影響する問題にもかかわらず、このまま何の議論もないままにネットでの医薬品販売が出来なくなるとすれば、消費者に対してあまりに無頓着。実情を知らな過ぎます。利用出来なくなってから不便さが分かり、結果的に販売できるようになったとしても諸手続きのことなどを考慮すると随分と時間がかかります。いま、何とかしないとダメなんです。結果がどうなるにせよ、いまの我々の取り組みはネット販売が安全に商品を購入できる形態となるためのベースを作るうえで有効であると確信しています。。

“無限性”の有効活用がネット市場のさらなる進化のカギ

――今年はネットスーパーが拡大するなど、もはやネットショッピングは、特定のものを購入するツールの域を超え、リアルに匹敵する販売形態となりつつあります。2009年には医薬品のネット販売について、省令も出ると思われますが、ネット市場がさらに拡大を続けていく上で、どうあるべきでしょうか。


藤江泰弘氏写真

リアルの店舗でのヒット商品は、必ずネットでもヒットします。従って、情報のアンテナをより拡げることが大切になると思います。リアルとの比較で言えば、ネット上の商品棚は“無限大”。このメリットを生かすためにも情報をうまく収集・活用することです。また、ネットはニッチな部分に強みがあります。メジャーなメディアや広告などでは知りえない細かい情報をしっかりと掬い上げ、取り上げることが重要になってくると思います。取り扱い商品数についても同じようなことがいえます。ネット上で突如売れるものがあったりするのですが、その原因を探ると「ほかで扱っていない」ということがよくあります。例えば、店舗から姿を消した商品であったり、メディアで鳥インフルエンザの危険性が取りざたされ、すぐに買いたい人がネットに殺到したり、という場合です。そういう商材をしっかりと確保しておくことも大切です。いわゆるロングテールですが、ネットの無限性で商材も情報もできる限り豊富に提供することが、ひとつのポイントとなるでしょう。弊社としましては、そういったことを踏まえ、今後、商材数をさらに増やし、加えて単に写真と価格と規格の掲載にとどまらず、メーカー側の情報、そして口コミ情報なども盛り込んで、いろんな方向から商品比較でき、消費者ができるだけ迷うことなく商品購入でき、生活をより快適にしていけるようなものにしていきたいと考えています。

プロフィール

ケンコーコム株式会社
藤江 泰弘(ふじえ やすひろ)

1973年生まれ。北里大学卒業後 9年間、ドラッグストアチェーンに勤務。店頭でのカウンセリング販売やエリアマネージャー、バイヤー等の経験を経て、ケンコーコム株式会社入社。
現在、健康食品および医薬品カテゴリのバイヤーとして品揃えから商品に関する情報提供の在り方まで幅広く携わる。

会社概要

ケンコーコム

URL
http://www.kenko.com/

1994年11月設立。健康関連商品の通信販売を行う。取り扱い商材は、11万を超え、健康美容業界のネット市場を牽引する。カテゴリーは健康食品、フード、化粧品、日用品、介護、健康機器と多岐にわたり、医薬品も取り扱う。ネットでの医薬品販売については、薬剤師チーム管理の下、慎重に行っているが、2009年6月施行予定の改正薬事法では、一部商品の販売に制限が出る方向に進んでおり、徹底抗戦を続ける。2008年3月期の売上高は80億2,275万円。

医薬品のネット販売を巡る経緯

2006年
通常国会で改正薬事法成立
2008年7月
厚労省主催の検討会の報告書がとりまとめられ、医薬品のネット販売について第1類医薬品は対面の原則が担保できなければ適当ではないとされる。
2008年8月
ヤフー・楽天などネット販売事業者102社が連名で厚労大臣宛に意見書を提出
2008年11月
日本オンラインドラッグ協会「安心・安全な医薬品インターネット」販売を実現する自主ガイドライン」発表
2008年12月
楽天、ヤフー、日本オンラインドラッグ協会などが一般から集めた10万件以上の署名とともに「一般医薬品の通信販売の継続を求める要望書」を厚労大臣に提出。
 
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バックナンバー
第15回 新潮流、アウトドアフィットネス(R)の可能性
第13回 消費者庁設立にうろたえないための心構え
第14回 激動のドラッグストアが向かう進路とは
第11回 現役東大生でサプリメント会社社長の戦略とは
第12回 なぜ日本ではサプリメントが有効に機能しないのか
第9回 淘汰が進むエステ業界の現状と復調へのシナリオ
第10回 医薬品のネット販売はなぜ規制されるのか
第7回 ネットと連動した健康データ管理ビジネスの可能性
第8回 医療現場と健康食品の融合の先にあるもの
第5回 進化するネット通販の課題と現状
第6回 安全性第三者認証制度は業界に何をもたらすのか
第3回 ”風評被害”を未然に防ぐマスコミ戦術とは
第4回 一気に業界No.1になる顧客獲得スキーム
第1回 健食企業とおもちゃメーカーが異色の合体!
第2回 閉塞感を打破する「仕掛け」の極意とは
 
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