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メタボリックシンドロームの本質に迫る

特定健診・特定保健指導制度がスタートし、メタボへの関心が高まる中、医学、栄養学、臨床統計学、バイオマーカーなど、各分野で最も活躍する講師が集結し、「食とメタボ」のテーマでシンポジウムが開催された。メタボとは一体何なのか、メタボ健診で本当に十分なのか、メタボ健診の将来展望は…。健康食品事業者のみならず、受診対象者、受診予備軍の人まで興味津々の事項について詳細に語られた講演内容をダイジェストで紹介する。

【4月25日、東京大学弥生講堂 一条ホール=主催・TTC】

 

「保健指導における栄養指導・管理の方法と役割」

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部 学部長・大学院教授 中村丁次氏

メタボ健診は国策としての世界初の個別対応リスクマネジメント

今回の保健指導は、生活習慣病の一時的予防、具体的にはメタボリックシンドローム、つまり肥満がそのターゲットである。本来、人間は摂取カロリーと消費バランスのバランスを神経系と内分泌系により調整し、多少の過食でも太らない恒常性が維持できるしくみがある。

近年増大する生活習慣病は、運動不足や過食が生体が持つそうした内部の調整機能に障害を与えることにより起こっている。とはいえ、例えば一日にまんじゅう1個食べるのをやめ、20~30分余計に歩けば腹囲を半年で6㎝短くすることは可能である。生活習慣の改善は、このように簡単で有意義にもかかわらず長期間の観察で減量に成功した人は少ない。地域や国単位でも肥満問題を解決したところはほとんどないといわれている。

そうした中で〝特定健診〟は国の政策として、リスクマネジメントを個別で対応する世界で最初の取り組みであり高く評価できる。今後は、専門家の人材育成が重要であり、関連ビジネスも拡大するであろう。

 

「メタボ対策の問題点―疫学の立場から―」

東京大学大学院医学系研究科 教授 大橋靖雄氏

正しく機能するためには幅広い観点からの診断が必要

メタボリックシンドロームを中心とした生活習慣病対策強化の目的で2008年4月より、40歳以上75歳未満の健康保険組合などの医療保険加入者(被保険者・被扶養者)に対し、健康診査および保健指導を法律で義務付けることとしてスタートした特定健診。いわゆるメタボ対策として、同健診が機能するためには、疫学的見地から以下の疑問点がある。

  1. 効果が検証され、かつ資源投入の点で実行可能な保健指導法が存在するのか。
  2. いわゆる階層化で保健指導が必要とされる対象者の脳血管疾患発症リスクが高いのか。
  3. 逆に保健指導の対象にならないもののリスクが低いのか。
  4. 2、3を前提として、保健指導対象となるリスクパターンの起因リスクが大きい。すなわち、効果的に発症イベント数を減少できるのか。
  5. 階層化の基本である内臓脂肪量の予測子として、「男85cm、女90cm」の腹囲基準が適切であるのか。

  その答えは、(2)以外、概ねノー。つまり、メタボ対策は疫学的には大きな問題がある。

 したがって健診は限定的では危険であり、広い視点から観察する必要がある。糖尿病ひとつをとってもやせた糖尿病患者もいれば太った患者もいる。疫学的見地からは、そういった部分をしっかりフォローできるか、がメタボ診断の課題といえる。

 

メタボリックシンドローム予防における未病診断バイオマーカーの開発と応用

名古屋大学大学院生命農学研究科 教授 大澤俊彦氏

メタボ数値に特化した抗体チップの開発は今後一層活発化

メタボリックシンドロームがメディアをにぎわせている。そうした中、重要課題となるのはいかに、まだ健康人、いわゆる「未病」段階に長くとどめていることができるか、である。未病段階で特異的に発現する「バイオマーカー」(生体指標)を用い、将来疾病に至るリスクを低減できないものか。そういった背景のもと、メタボリックシンドローム予防食品の機能性評価にも応用できるバイオマーカーをチップ上にインプリンティングしよう、という計画をスタートした。

最初にメタボ診断の重要なバイオマーカーとして注目されるアディポネクチンを取り上げ、その後レプチンをはじめ、レジスチンやmcp-1、さらには炎症反応の重要なバイオマーカーであるIL-6やTNF-αなど肥満にかかわるホルモンやサイトカインなどについてもアゾポリマー上への固定化の検討が進められている。

今後、日本が健康長寿を目指すためには国家レベルでの大規模介入試験の必要性が唱えられ、また、バイオマーカーに基づく大規模な分子疫学研究の重要性も認識され始めている。そうした状況を後押しするためにも、微量の血液や唾液、尿中に存在するバイオマーカーに着目して開発した抗体チップを用い、科学的根拠を持つ機能性食品開発のための評価システムの開発が最終目標となる。

 

メタボ対策と食品表示

独立行政法人国立健康・栄養研究所 理事長 渡邊昌氏

正確な栄養状況の把握が食事指導に不可欠

約1,960万人といわれるメタボ予備軍。40歳から74歳では男性の2人に1人、女性で5人に1人が該当する。こういった肥満者の増加は摂取エネルギーの過剰が原因、と指摘した上で、正確な栄養摂取状況の把握が食事指導に欠かせないとした。

そのためのメソッドとして、エネルギーの摂取判定、栄養教育、栄養療法、などを紹介。その一方で一日に何をどれだけ食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示した食事バランスガイドが、主食、主菜、副菜が「1つ」、「2つ」という単位表示のためわかりにくく、イメージとしてはともかく、実用性に乏しいきらいがあるとした。

 

アンチエイジング医学からみたメタボリックシンドローム

順天堂大学大学院医学研究科 教授 白澤卓二氏

「腹八分目」はメタボにも長寿にも有効

メタボリックシンドロームはカロリーの過剰摂取と運動不足が発症基盤にあることから、基礎老化研究者が研究対象としてきたカロリー制限と対極をなす概念と考えられる。

そうした中で60%のカロリー制限が生き物の寿命を延ばすデータを公開。一方でメタボの人では延命スイッチといわれるSir2がオフになっていることを解説した。

アンチエイジングにおいては「食事」と「健康」と「生きがいを持つこと」が大切と話し、食事についてはレスベラトロールなどの植物性フィトケミカルを使うことがポイントとした。ただし、効果があるとされる摂取量は例えば赤ワインでは300杯分にもあたり、現実的には困難であると話した。そこで、自身が開発に関わった食事レシピを公開し、家庭でずっと若く生きる食べ方などを指南した。

運動については、5月上旬都内にヨガ、バランスボールのメタボ対応スタジオをオープンすることを明かした上で、手軽にできるヨガやバランスボールなどが継続することが重要である点でも適しているとした。

 

メタボリックシンドロームの本質

帝京大学医学部内科 主任教授 寺本民生氏

メタボ健診の軸は心血管イベントの予防

再三のマスコミ報道などで「メタボ」というフレーズは定着した感がある。しかし、その本質をどれだけの人が理解しているかいうと疑問符がつく。そうした中で、メタボリックシンドロームとはなんのか。その診断基準の軸について語った。

いえることはメタボリック症候群の診断基準は、心血管イベントの予防であるということ。つまり、メタボ健診ばかりを取り上げて大騒ぎするのではなく、それが心血管イベントにつながる危険因子のひとつの要因であるということを認識することが大切である。従って、喫煙や高LDLは極めて高いリスク因子となる。

そうした中で、メタボリックシンドロームについてなぜ真剣に対策に取り組む必要があるのかについて説明。①非常にポピュラーである②ハイリスクである③それぞれの危険因子が軽症である④したがって放置される可能性が高い⑤長期の治療不完全な状態が危険

、と5つの要因を挙げた。大きな問題は、多くの人がいわゆる予備軍でありながら、症状がないために軽視されがちであり、かつ治療しなければ大きな疾病へつながることである、とした。

さらに社会全体を見ても肥満児が増加傾向にあり、21世紀は「肥満との戦いの時代」であると指摘。その対策として、メタボ健診が有意義であると延べた。その理由として、家庭の親が生活習慣病の予防に注意することで、その子供たちにも健康管理ができ、メタボ診断は、そういった意識づけになるため、とした。

 

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