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健康不安上位に「認知症」

2009/2/20

年始めに中高年を対象に健康に関する意識調査を実施
~40代・50代・60代の男女各100名ずつ計600人を対象~

NPO法人 日本ブレインヘルス協会では、2009年はじめの試みとして、脳の健康に関する意識調査を実施した。この結果に関して、杏林大学医学部精神神経科教授 古賀良彦氏と秋田県立脳血管研究センター神経内科学研究部長?長田乾氏に話を聞いた。

<脳の健康に関する意識調査の主な結果>

・「認知症」に対して、中高年の2人に1人が、「将来自分がなるかもしれない」などの不安や恐怖感をいだいている。
・脳を健康に保つための対策としては、「脳トレグッズ」33%、「パソコンを使う」14%、「読書・聞」14%、「運動・散歩」10%。
・「最近、物忘れが多くなったと感じる」と答えた人は全体の8割以上。
・「『脳トレなどの脳関連グッズ』に関して、実際に持っている・または興味がある」人は2人に1人。
・「脳の健康に良いイメージの食品」について、多くが「魚」と回答。「肉」と答えた人はごく少数。

■高まる認知症に対する不安、「どうしたらいいかわからない」が8割

 意識調査の結果、“がん”に次いで2番目に注目され、65歳以上の7.5%が発症、高齢者の20%が予備軍とも言われている「認知症」。高齢者の増加に伴い、今後一層の増加が予想されている。今回の意識調査では、認知症に対して、2人に1人が「将来自分がなるかもしれない」などの不安や恐怖を感じており、一般的にも「認知症」に対する意識が高まってきていることが明らかになった。古賀氏は、「認知症に関する患者さんからの相談は年々増えており、杏林大学病院もの忘れセンター(高齢医学科 鳥羽研二教授)の予約は3ヶ月先まで常に埋まっている状態」と話し、長田氏も「社会的にも認知症に対して敏感になっている」と言う。「認知症」という脳の病気は、誰でもなりうるものとして、一般的にも認識されてきているようだ。

 一方で、「認知症」に対する予防策が一般的に浸透しているかというとそうでもない。本意識調査でも、「日常生活において脳の健康を保つための対策をしていますか」という質問に対しては、8割近くが「まったくしていない」「あまりしていない」と答えており、理由として、「どうしたらいいのかわからない」「効果があるかはっきりしない」といった、脳の健康維持対策の無知を訴えるものが多い。また、「している」と答えた人についても、「読書」「仕事」「運動」など日常生活の域を出ないものがほとんどで、「認知症」に対する効果的な予防策は認められていないのが現状のようだ。

■「最近、物忘れが多くなった」と感じる人は8割にのぼる
中には軽度認知障害(MCI)の可能性があるケースも

 このように「認知症」への具体的な対策がとられていない一方で、本意識調査において「最近物忘れが多くなったと感じる」と答えた人は全体の8割以上を占めている。古賀氏によると、「物忘れ」は老化とともに誰しもが感じるものであり、それ故に、多少の「物忘れ」は仕方がないとあきらめている人も多いと言う。しかしこの「物忘れ」現象、誰しもが感じているからと言って甘くみてはいけないようだ。
 そもそも、「認知症」とは、「記憶障害や判断力の低下など、脳の認知機能の障害が進行して、自立した生活が困難になり、見守りや介助が必要な状態」と定義される。これに対し、「物忘れ」は老化によるものも含め、「物忘れ」の自覚はあるが、日常生活を送るうえでは、特に目立った支障はない「軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)」と呼ばれる症状が注目されている。これは正常と「認知症」の中間に存在するグループであり、一般的には通常の老化による「物忘れ」と区別がつかない。しかし、この「軽度認知障害(MCI)」という症状は、アルツハイマー病の前兆の可能性があるということがわかってきている。長田氏によると、「この軽度認知障害(MCI)の症状が見られる人の4割が4年以内にアルツハイマー病を発症する」と言う。つまり、ふだん何気なく「物忘れ」を感じる人の中には、実は「軽度認知障害(MCI)」で、将来「認知症」になる可能性のある人が含まれているのである。

■「認知症」対策のキーワードは“脳の予備力”

 要するに、物忘れの自覚のあるこの段階で適切な対策をとれば、認知症の発症を防いだり、物忘れを軽度で留めておくことができる。将来的な認知症の予防のカギとなるのが“脳の予備力”である。長田氏によると、「“脳の予備力”とは、脳に病的な状態が生じても持ち堪える力など、脳の柔軟性や、活力のことである。例えば、認知症を引き起こすアルツハイマー病の主な原因であるアミロイドが脳内に多く見られるといったアルツハイマー病の所見がある人でも、必ずしも認知症が発症するとは限らず、これは本人に“脳の予備力”があるかどうかによるものと考えている」と言う。また、脳卒中を経験したことがある人は、将来的に認知症になりやすいことも実証されており、脳に梗塞などがあるかどうかも“脳の予備力”の判断基準になりえる。“脳の予備力”を高めることは、“認知症になりにくい”脳をつくることであり、これこそが、認知症予防の効果的な対策と言える。また、現役で働いている人は、退職して脳を使っていない人よりも「認知症」になりにくいと考えられている。

■日常生活から“脳の予備力”を高めるには!? 脳と「肉」の意外な関係!

 認知症予防のポイントとなる“脳の予備力”をふだんから鍛えるにはどうしたらいいのだろうか?意識調査の結果では、「『脳トレなどの脳関連グッズ』を、実際に持っている」とした人が全体の4人に1人、「今は持っていないが興味がある」という人も含めると2人に1人と、日常生活において何かしらの脳の健康対策をとり入れようとする傾向があることが分かっている。古賀氏によると、「脳トレやクイズ、計算などで“脳を鍛える”ことも“脳の予備力”を高めることにつながる。その際には、自分にあったメニューを毎日続けることが大事である」と言う。
 また、脳の健康には、食生活も切り離すことは出来ない。意識調査では、脳に良いイメージの食品は何か」という質問に対し、「魚」という回答が多い。それに対し「肉」と答えた人は魚と答えた人の10分の1程度にとどまった。魚には、必須脂肪酸の一つであるDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれており、この成分が脳の活性化にはたらくとされているのは、一般的に広く浸透している。しかし古賀氏によると、「肉」と魚をバランス良く摂取する必要があると言う。これは同じ必須脂肪酸で、肉に多く含まれるアラキドン酸(ARA)がDHAと並んで脳の活性化に欠かせない成分であり、意識して食事から摂取する必要があるからだ。また、高齢者ほど、肉を敬遠する傾向があるが、摂り過ぎには気をつけながらも、ふだんから意識して肉の摂取をこころがけ、バランスのとれた食生活を心がけるよう古賀氏は呼びかけている。

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