精神状態が前向きであるか悲観的であるかは、いずれも癌(がん)患者の生存期間を左右する独立した因子とはならないことが示された。この知見は米医学誌「Cancer」12月1日号に掲載される予定。
今回の研究では、米ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)のJames Coyne氏らが、頭頸部癌の第III相臨床試験に参加した約1,100人のデータを収集。被験者は、試験開始時およびその後の追跡時に、「悲しい」「病気と闘う希望を失くした」などの項目を含む、情緒面の健康を評価する質問表に回答した。
5年間の試験期間中に646人が死亡。データを分析した結果、精神状態が癌の経過や患者の生存率に影響しないことが明らかになった。ただし、生存率への影響がないとしても、患者の生活の質(QOL)改善のために必要であれば、心理療法やサポートグループを利用するべきだとCoyne氏は述べている。
精神状態が癌の予後に及ぼす影響を評価した研究はこれが初めてではないが、今回の研究ではこれまでの研究よりも死亡者数が多いことから、他の要因の調整ができ、全被験者が同じ治療を受けている点でも優れているとCoyne氏はいう。
この知見に対し、米スタンフォード大学(カリフォルニア州)医学部精神行動科学科のDavid Spiegel博士は、評価の尺度(スケール)に信頼性がない点や、頭頸部癌の予後が一般に極めて悪く、手術や放射線療法といった厳しい治療が社会的および心理的な影響をもたらしやすい点などを指摘している。
医学誌「Cancer」2月号(2007年)に掲載されたオーストラリアの研究でも、肺癌患者の疾患への姿勢は予後に影響しないとの結果が出ているほか、英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」11月1日号掲載の別の研究でも同様の結果が示されているが、Spiegel氏は、重要なのは「前向きな姿勢」ではなく、ストレスに向き合い、うまく対処していくことだと述べている。
米テキサス大学M.D.アンダーソン癌センター(ヒューストン)のMichael Fisch博士は、第III相臨床試験に参加する患者は、よりよい社会的・医学的サポートを受けてきていることを意味し、その時点で他の患者よりも有利な立場にあり、今回のデータを一般化することはできないと指摘している。
Fisch氏は、癌に対する姿勢をスポーツチームの応援になぞらえ、楽観的な人もいれば不安をもつ人もいるが、同じチームを応援していることに変わりはないと説明する。癌に対して前向きでない患者をもっと前向きになるよう励ますことは逆にストレスを増やす原因になることがあり、患者にとってよい方法を見つけることが重要だという。(HealthDay News 10月22日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=609285
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