
京都大学および米ウィスコンシン大学の2つの研究グループがほぼ同時に、ヒトの皮膚細胞からES細胞(embryonic stem cell: 胚性幹細胞)に極めて近い万能細胞を作り出すことに成功した。
ES細胞は体のあらゆる細胞になる能力をもつ多能性細胞で、さまざまな疾患の治療に利用できる可能性に期待が集まっている。しかし、ES細胞を採取するには、その後の成長が可能な胚を壊す必要があり、倫理的な面で議論を呼んでいる。今回の2研究で示された方法は胚を用いていないため、そういった議論を避けることができる。
ウィスコンシン大学の研究を率いたJames Thomson氏は、「ES細胞と本質的に同じものを成熟細胞から作り出す方法が示されたことで、倫理面の議論に変化がもたらされるだろう」と述べている。一方、日本の研究を率いた京都大学の山中伸弥教授も、「この細胞が、疾患の機序の理解や、有効かつ安全な薬剤の開発、細胞療法などに役立つ可能性がある」と述べている。しかし、治療に応用できるようになるまでの道のりは遠いと、テキサスA&M大学健康科学センターのRobert Tsai氏は指摘している。山中氏らの研究は医学誌「Cell」11月30日号に、ウィスコンシン大学の研究は「Science」オンライン版に11月20日掲載された。
両チームの用いた根本的原理はほぼ同じで、山中氏のチームでは、レトロウイルス(細胞の癌化に関連するウイルス)を用いて皮膚細胞に4個の遺伝子を組み込んだ。ウィスコンシン大学のチームでは、用いた遺伝子が山中氏らのものとは2個異なる。作製された「iPS細胞(induced pluripotent stem cell: 誘導多能性幹細胞)」は、外見や細胞培養における性質の面ではES細胞に極めてよく似ているが、3万個強の遺伝子について調べた結果、約1,000個の遺伝子の発現が異なっていることがわかった。
このヒトiPS細胞が、ES細胞に取って代わるものとなるかどうかの判断には、さらに研究を重ねる必要があるという。iPS細胞の出現によってES細胞の研究が終わるわけではないが、今後の研究にES細胞が用いられることは少なくなっていくはずだとThomson氏は述べている。
山中氏によると、作製にレトロウイルスを用いているため、iPS細胞が発癌性をもつ可能性があり、安全性を確認することも今後の課題だという。また、iPS細胞から精子や卵細胞が作られるとすると、iPS細胞でも倫理的問題が生じる。誤った使い方を避けるために、ヒトiPS細胞の作製と利用については適切な規制を実施することが不可欠であると山中氏は述べている。(HealthDay News 11月20日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=610169
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