軽度の遺伝障害に対する遺伝子スクリーニングのあり方に疑問を呈する指摘があるが、ゴーシェ病(Gaucher disease; GD)を検討した研究で、遺伝子スクリーニングで胎児に陽性反応がみられたために親が中絶を選ぶ傾向のあることが示された。
GDはアシュケナージ系ユダヤ人に比較的多い遺伝性の糖脂質代謝不全を来す疾患で、特定の酵素の活性低下により発症する(※日本でも2001年に特定疾患治療の対象疾患に指定)。肝臓や脾臓の肥大、貧血、血小板減少、不完全骨折や骨減少などの症状がみられるが、3つのタイプのうち一般的な1型GDは無症状で、重症であることは少なく治療可能である。
イスラエル、シャーレゼデックShaare Zedek・メディカルセンター(エルサレム)のShachar Zuckerman氏らは、1995年1月~2003年3月にイスラエルの10施設でスクリーニングを受けた約2万8,893人のデータを分析した結果、83組のカップルがGDキャリアで、キャリア頻度は5.7%であった。子どもに1型GDのリスクを認めたカップルは82組で、うち70組(85%)は無症状か軽度、12組(15%)は中等度であった。
出生前診断は妊娠90件中68件(76%)で実施され、GD陽性の16件中4件(25%)が中絶を行った。中絶胎児のうち2例は無症状または軽度、2例は中等度のGDと予測されていた。遺伝カウンセリングに加えて、GD専門医による医学的カウンセリングを受けたカップルの中絶は13組中1組(8%)で、受けていない3組中3組(100%)よりも少なかった。
遺伝子スクリーニングの結果、中等度の1型GD、無症状または軽度の1型GDの出生率はそれぞれ66、15%減少した。しかし、これは治療可能な胎児や無症状と思われる胎児を中絶した結果であり、Zuckerman氏らは疾患の重症度を完全には予測できないスクリーニングの有益性に疑問を抱いている。
同氏は「他の疾患でも言えることだが、軽度GDに対する中絶を避けるには、スクリーニングプログラムに従来から行われている専門医による医学的カウンセリングを併用させることが必要だ」と述べている。この知見は、米国医師会誌「JAMA」9月19日号に掲載された。
米スクリップスScripps研究所(カリフォルニア州ラホヤ)のErnest Beutler博士は「関連遺伝子変異をもつ患者が、重症疾患を発現するかあるいは全く発現しないかを決定する因子が十分に解明するまで、スクリーニングは害をもたらす可能性のほうが高い」と述べている。(HealthDay News 9月18日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=608321
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