有望な結果の得られた癌(がん)治療の第II相臨床試験のうち、第III相試験へ進むのはほんのわずかであることが、カナダ、トロント大学Ian Tannock博士らの研究により判明し、6月にシカゴで開催された米国癌治療学会年次集会(ASCO 2007)で報告された。
動物実験を通過した薬剤が臨床の場に届くまでには、第I相、第II相、第III相(フェーズI, II, III)試験の3段階がある。第I相試験は、少数の被験者で治療の安全性や安全な投与量をみるもの。第II相試験は、通常100人以下を対象に、その治療が特定の癌にどの程度効果的かをみるもの。第II相試験で良好な結果が出ると、第III相試験に進む。第III相試験は、大人数をランダム(無作為)に割り付け、新薬と標準的治療法の効果を比較するもので、多額の資金を要する。米国食品医薬品局(FDA)の認可には、第III相での良好な結果が必要である。
今回の研究で、乳房、肺、消化器、泌尿生殖器、婦人科の癌について有望な結果の認められた第II相試験200件を調べた結果、第III相試験に進んだのはわずか13%と判明。多くは、資金が得られない、必要な患者数が集まらないなどの理由で実施されなかった。
ところが、第II相試験の計画時点でこのような制約がわかっていたケースが多いことも明らかになった。Tannock氏は、先に進めないと知りつつ実施するのは、研究者の出世という目的があるためだという。癌専門医の昇進は論文の発表にかかっており、第II相試験は比較的小人数で行うため、第III相試験に比べ、若い研究者が「筆頭研究者」になれる可能性が高い。しかし、研究者がそれを意識しているわけではなく、制度がそうさせているのだとTannock氏は述べている。
ある研究者によると、ヨーロッパに比べて米国では第II相試験の実施がはるかに多い。米国の若い医師らの間に「Publish or Perish(論文を書くか、消え去るか)」という圧力があることに加え、製薬会社が第III相試験にかける高額な費用を節約するため、小規模な第II相試験の結果を基に、すでにFDA承認済み薬剤の適応外の使用を奨励することもある。このほか、単純に第II相試験が広い関心を集めにくい点も指摘されている。
ASCOのRichard Schilsky博士も、「Publish or Perish」の状況が第II相試験過剰の原因と認めており、大規模第III相試験に重要な役割を果たした研究者に対しもっとよい報酬制度が必要で、一般の人も第II相試験の結果は慎重に受け止めるようにと指摘している。(HealthDay News 9月10日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=608055
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