アルツハイマー病患者の脳に老人斑(プラーク)を形成するアミロイド-β(ベータ)蛋白(たんぱく)が、緑内障での網膜細胞死の原因となる可能性が示され、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Science(PNAS)」オンライン版に8月7日掲載された(印刷版8月10-16日号に掲載)。
今回の研究で、英ロンドン大学(UCL)のM. Francesta Cordeiro博士らは、緑内障を発症するよう操作したラットに対しアミロイド-βの生成経路を阻害する薬剤を使用したところ、眼の損傷が軽減し、網膜細胞の寿命が延長した。数種類の方法で生成経路の阻害を試みたところ、そのうちの1種類で最も効果が高く、全種類の方法を併用すると、さらに大きな効果がみられたという。
この知見は、緑内障治療について眼科医の間で最近浮上している疑問を解く鍵となる可能性もある。数年前まで、緑内障は眼圧の異常な上昇により網膜細胞死が起こるものであると記載されており、現在も主に眼圧を下げる治療が行われているが、実は緑内障患者の半数以上で眼圧は正常に近いことがわかってきている。米国眼科学会(AAO)は現在、眼圧上昇を緑内障の原因であるとする記述を削除し、単に主な危険因子(リスクファクター)であるとしている。
Corderio氏らは、アルツハイマー病患者に緑内障に似た網膜細胞死がみられたことでアミロイド-βに注目。死滅した網膜細胞にアミロイド-βの蓄積が認められたほか、培養した網膜細胞にアミロイド-βを添加すると細胞死が誘発されることもわかった。この研究から、眼を身体の入り口として用いてアルツハイマー病を治療できる可能性もあるとCorderio氏は述べている。
米デューク大学(ノースカロライナ州)のStuart J. McKinnon博士は、この研究の根底にある考え方は妥当とする一方で、低眼圧緑内障の優れた動物モデルがなく、今回の研究では、高眼圧にして緑内障を発症させたラットモデルを使用している点を指摘。評価は慎重にすべきと述べている。また、細胞死の原因も不明で、遺伝子の違いなのか、眼圧に対する感受性の差なのかもわかっていない。しかし、いずれにせよアミロイド-βを標的とする新しい治療法への道が開かれたことは確かであり、いずれはプラーク形成を予防するワクチン実現の可能性もあると専門家らは述べている。(HealthDay News 8月7日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=607060
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