「体外離脱(幽体離脱)」を疑似体験させる2研究がヨーロッパで実施され、米科学誌「Science」8月24日号に掲載された。
「体外離脱」とは、肉体を離脱して自分の体を離れたところから見ているような感覚のことで、ストレスにより視覚、触覚、自分が自分の肉体にあるという固有受容感覚などが分断されたときに生じるという。時に外傷を受けた人が臨死体験として報告している。臨死現象研究専門家であるKevin Nelson博士によると「体外離脱」は珍しくはなく、20人に1人は体験しているが、自然発生的でコントロールできないため、これまで詳しく研究することが難しかった。
今回の研究の一つは、英ロンドン大学(UCL)神経学研究所のHenrik Ehrsson博士らによるもの。被験者にハイテク3Dゴーグルを装着させ、約6フィート(約1.8m)離れた位置から撮影した自身の体をリアルタイムの3D映像で見せた。プラスチック棒で被験者自身の胸部(本人には見えない)に触れると同時に、映像の同じ部位にも触れたところ、被験者は自分の肉体を6フィート離れた後ろから見ているような感覚を覚えたという。さらに、幻影の体をハンマーで打とうとすると、被験者に発汗の増大がみられ、その恐怖を現実のものと感じていることが示された。
もう一つの研究は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校Ecole Polytechnique Federal de Lausanne(EPFL)のOlaf Blanke氏らが実施したもの。被験者に、自分自身の体、人体模型、四角形をしたブロックのホログラフィ映像の一つを見せ、映像の「背中」をブラシでなで、時々は同時に被験者自身の背中もなでた。その直後、目隠しをして後退させ、自分がいた元の位置まで戻るよう指示すると、模型またはブロックを見ていた被験者は正確に元の位置に戻ったが、自分自身の映像を見ていた被験者は幻影があった位置まで進んだという。
専門家の一人は「興味深い研究。体に触られた感覚を、まるで別のところにある自分の体を“見て”いるように感じている。これは、車を運転するビデオゲームで、運転する車の映像は自分の前に見えているのに、あたかも自分が車の中にいるように感じる人がいることにも似ている」と述べている。
Nelson氏によると、どちらの研究も「体外離脱」を完全に再現したわけではないが、空間の中で自分の存在を認識する上で視覚が重要であることを示すものだという。通常、脳で行われている視覚と触覚や固有受容感覚との統合が、幻影により混乱させられ、その結果、一時的に自分の肉体が隔絶しているような感覚を覚えるのだという。同じことが睡眠-覚醒の過渡期や、脳が死に近い状態にあるとき、特定の病状にあるときに起きている可能性もあるという。
ただし、視覚だけが最も重要というわけではなく、ほかの感覚についても実験方法があれば同様の結果が得られるはずだという。この知見は、神経化学分野にとどまらずテレビゲームや遠隔手術などに応用できる可能性もあるほか、神学や哲学の核心に踏み込むとも思えるものだが、霊的なものとを混同するべきではないとNelson氏は指摘している。(HealthDay News 8月23日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=607615
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