エストロゲン療法を受けている50歳代の女性では、冠動脈へのカルシウム沈着が少なく、心疾患リスクの低いことが、新しい研究によって示唆された。この研究結果は、更年期障害を緩和するためにエストロゲンを服用している女性にとっては不安を和らげるものであるが、「ホルモン補充療法(HRT)が心疾患予防のライセンスとなるものではない」と専門家はくぎを刺している。
研究は、米国で健康な50-79歳の閉経後女性約16万2,000人を対象に実施された大規模研究「女性健康イニシアチブ(WHI)」のサブスタディ「冠動脈石灰化研究(CACS)」として行われたもの。WHIでは、エストロゲン単独療法(子宮摘出者)群とエストロゲン+プロゲスチン併用療法(子宮保有者)群においてそれぞれプラセボ(偽薬)群との比較試験が行われたが、併用群では心疾患リスクの上昇などが認められ、安全性の面から2002年7月に併用療法試験が中止された。エストロゲン単剤療法試験も2004年3月に終了、2010年まで被験者の追跡調査が行われている。
今回の冠動脈石灰化研究の責任者である米ハーバード大学医学部(ボストン)教授のJoAnn Manson博士らは、子宮摘出術を受けた50~59歳の女性1,064人を、エストロゲンまたはプラセボ投与群に無作為に割り付け、平均7.4年間投与。さらに1.3年間の追跡調査を行った。
その結果、エストロゲン群ではプラセボ群に比べて重度の冠動脈石灰化を生じる可能性が30~40%低く、薬物療法を80%以上遵守した女性では、重度の冠動脈石灰化リスクが60%低かった。Manson博士は「エストロゲンの使用に躊躇(ちゅうちょ)している(閉経前後の)女性にとって心強い結果だが、心血管疾患予防のために使用すべきというわけではない。末梢血管(脚部)での血栓などのリスクがあるからだ」と述べている。
国際更年期学会(IMS)は「今回の研究結果により、エストロゲン療法の年齢および期間について新しい『安全域』が示唆された」とコメント、別の専門家は「更年期症状のある50歳代女性がエストロゲン療法を開始する際に、リスクがほとんどないことを再確認した結果だ」と述べている。
米テキサスA&Mヘルスサイエンスセンター大学医学部准教授のFarida Sohrabji氏は「閉経後早期と後期の患者には異なる治療を行うことが重要であり、ホルモン療法の使用は更年期症状を軽減させる場合に限るべき」としている。米Lenox Hillレノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のSuzanne Steinbaum博士も「いつの日か、心疾患予防に使用できると言えるかもしれないが、現時点では予防目的で使用すべきでない」と述べている。
この知見は、米医学誌「New England Journal of Medicine」6月21日号に掲載されている。(HealthDay News 6月20日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=605720
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