癌(がん)抑制蛋白(たんぱく)として知られるp53および細胞調節因子Arfに、老化を遅らせる働きのあることがスペイン国立癌研究センター(マドリード)Manuel Serrano氏らの研究で示され、英科学誌「Nature」7月19日号に掲載された。
癌研究者にとって、p53蛋白はなじみ深い物質である。p53は生体で作られ、悪性化するリスクの高い細胞を除去する働きがあり、Arfはp53に除去すべき細胞を知らせることにより、その働きを助けているとされる。Serrano氏らは、p53およびArfを過剰に発現するよう遺伝子操作したマウスを何年も研究に用いるうちに、このマウスの寿命がほかのマウスよりも長いことに気付いた。
今回の研究では、p53/Arf過剰産生マウスから採取した細胞を詳細に検討。老化マーカーを調べた結果、老化の遅延が認められ、癌抑制効果を考慮してもなお寿命の延長がみられることが明らかになった。
Serrano氏は、p53およびArfにより老化が抑制されるのは、癌が抑制されるのと全く同じ理由であるとの見解を述べている。老化は細胞の欠陥が蓄積して生じると考えられているが、p53およびArfはいわば細胞の「品質管理」を担うもので、p53の多いマウスほど細胞が厳しく管理され、癌になりにくく老化も緩やかであるとSerrano氏はいう。
米国立加齢研究所(NAI)のFelipe Sierra氏によると、どの哺乳類でも寿命が終わりに近づくと急激に癌の発症率が上がるが、その理由もp53によって説明できるという。80年近く生きるヒトの場合、それだけ長期間にわたり癌を防ぐ必要があり、p53がそれを助けている。若いうちはp53/Arfが癌を防いでいるが、年を取るとその効果が衰えると同氏は考える。老化と癌に密接な関係があるのは誰もが感じていたが、今回の研究はその根拠を示すものだという。
しかし、不老不死の薬のようなものをすぐに期待してはいけない。生体内のp53を増大させる数々の化学物質が大手の製薬会社により開発されているが、まだごく初期の試験段階で、p53の作用を精密に調整するのは容易ではないとSerrano氏は指摘。Sierra氏も同意見で、あくまでも基礎的なメカニズムが明らかになっただけで、その操作を論じるのは時期尚早で、「若さの泉」はすぐそこにはないと述べている。(HealthDay News 7月18日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=606474
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