癌(がん)研究者らは新しい治療法を開発する際、特異的な腫瘍細胞株を信頼しているが、これらの細胞株がその宣伝文句どおりとは限らないことが、オランダの研究チームによって報告された。
今回の研究は、オランダ、ロッテルダム大学メディカルセンターJosephine Nefkens研究所病理部門分子診断学部長のWinand N.M. Dinjens氏らによるもの。研究の結果、世界中の研究で広く使用されている13種類のヒト食道癌細胞株のうち3種類が、実は肺や結腸直腸、その他の悪性腫瘍の細胞株であったことが判明した。
他の細胞が混入した細胞株や誤認された細胞株の2つは、臨床試験につながる100件以上の研究、11件の米国特許に関与し、臨床試験の1つは、バレット関連食道腺癌患者用の薬剤ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)に関するものであった。同薬は、腎臓癌と肝臓癌では承認されているが、食道腺癌への適応は未承認。Dinjens氏は「これらの細胞株を用いたより初期段階の研究では“まだ科学的に信頼できる”が、臨床試験は再考すべきである」という。
同氏らは「他の細胞が混入した細胞株の汎用は食道腺癌の治療法の開発を脅かす。世界で最も多い死亡原因というわけではないが、発生率が急増している食道腺癌の研究用の細胞株は14種類に過ぎず、動物モデルはなく、ヒトの検体もほとんどないため、このような細胞株の存在は新しい治療法の開発において重要である」と述べている。
研究結果は、米国立癌研究所誌「Journal of the National Cancer Institute」オンライン版に1月14日掲載された。(HealthDay News 1月14日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=634995
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