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薬事法をひもとく

【第9回】その他、健食ビジネスの関連法令について(3)

(1)特商法について

■ 健康食品の販促において、気をつけなければならない法律は薬事法だけではありません。

■ 今回は健食関連法案のひとつである「特商法」について見ていきましょう。


1.特商法とは

特商法(特定商取引法)の正式名称は「特定商取引に関する法律」です。この法律は、訪問販売や通信販売など消費者トラブルを生じやすい特定の取引類型を対象に、トラブル防止のルールを定め、事業者による不公正な勧誘行為等を取り締まることにより、消費者取引の公正を確保するための法律です。 健康食品等においても過去、特商法違反に問われたケースがあり現実的に注意が必要ですので事例をご紹介しましょう。

【 サッポロ製薬事件 】記事要約

経済産業省は2005年4月1日、通信販売会社「サッポロ製薬」が黒酢ダイエット系の健康食品「奥様美容で酢BT」の新聞折り込みチラシで謳っていた「1日2本飲むだけで本当に痩せる」などという広告表現は根拠がなく、特定商取引法に違反するとして3ヵ月間の業務停止処分命令を出したと発表した。同社は前年11月29日全国で500万枚の新聞折り込みチラシをまき、同製品について「食後に飲むだけで健康的にやせられる」と標榜。これに対して同省が特商法に基づき合理的根拠の提出を要求したところ、同社が提出した根拠は体験談レベルのものでしかなく、不十分であったため今回の処分に踏み切った模様。

【 アサヒ産業事件 】 記事要約

経済産業省は2005年11月2日、通信販売業者「アサヒ産業」に対し、特商法に基づき3ヶ月間(平成17年11月4日~平成18年2月3日)の業務停止命令を出した。経産省によると、同社は健康食品「鈴蘭沙棘(サジー)」の新聞折り込み広告において「飲んでグングン!感じるマッサージ効果!!」などと著しい痩身効果を謳っていたが根拠のないものであったという。また、同社は当該商品を飲食した結果、痩身効果が得られない場合は特に条件を設けることなく商品代金を返還する旨を謳っていたが、実際には返金を求めた消費者に対して返金条件を課していた模様。さらに、同社は商品の価格表示についても、安価で購入できる旨の誤認を招く表記をおこなっていたという。

以下、特商法の大枠をご紹介してまいります。

2.本法律の対象となっている取引類型

(1)訪問販売~自宅への訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールス等

(2)通信販売~新聞・雑誌・インターネット(オークション含む)等

(3)電話勧誘販売

(4)連鎖販売取引~個人を販売員として勧誘、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務(サービス)の販売

(5)特定継続的役務提供~長期・継続的な役務の提供とこれに対する高額の対価を約する取引(ex.エステサロン、語学教室、学習塾等)

(6)業務提供誘引販売取引~「仕事を提供するので収入が得られる」と誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引

健康食品等の場合は、通信販売にかかわる事例が多いと思われます。

3.規制の概要

1)行政規制

行政は、消費者への適正な情報提供を促すために事業者に対して以下の規制を行っています。違反すると、改善指示や業務停止の行政処分または罰則の対象となります。

(1)氏名等の明示の義務づけ~勧誘開始前の、事業者名、勧誘目的である等を消費者に告げることを義務付け

(2)不当な勧誘行為の禁止~不実告知(虚偽説明)、重要事項(価格・支払い条件等)の故意の不告知や威迫困惑を伴う勧誘行為の禁止

(3)広告規制~広告の際の重要事項の表示義務付けや、虚偽・誇大広告の禁止

(4)書面交付義務~契約締結時等に、重要事項を記載した書面を渡すことを義務付け

健康食品の場合は、(3)の広告規制の「虚偽・誇大広告の禁止」という不実証広告規制が景表法同様かかわりとして出てきます。先ほどの「サッポロ製薬」「アサヒ産業」の事例もまさにこれに触れるものです。

2)消費者救済のための民事ルール

消費者・事業者間のトラブルを防止し、その救済を容易にする等の機能を強化するため取り消しやクーリングオフを認め、事業者による法外な損害賠償請求を制限する等のルールを作っています。

(1)意思表示の取り消し~事業者が商品や役務についての重要な事実を言わなかったりうそを言ったりしたことにより消費者が誤って契約をした場合は、契約の取り消しができます。

(2)クーリングオフ~申し込みまたは契約後一定の期間、消費者は再考し無条件で解約できます。

(3)損害賠償等の額の制限~消費者が中途解約する場合等に、事業者が請求できる損害賠償額に上限を設定しています。

4.直近の法改正

一番新しい改正は、2004年5月12日に交付されました。消費生活に関係するポイントは以下のとおりです。

(1)販売目的を隠した勧誘に対する規制強化

(2)故意による説明不足に対する規制強化

(3)クーリングオフへの妨害行為に対する救済措置

(4)マルチ商法に加入した消費者が契約を取り消す方法の整備

特定商取引法の改正は、新しい消費者トラブルが発生すると迅速になされるようになってきています。法改正の動きについては常に注意が必要です。

以上、簡単に「特商法」に触れてまいりましたが、健康食品広告を作成する際には薬事法、景表法等だけではなく、特商法についても十分な知識を持って臨む必要があります。バランスよい法知識を身につけて頂きたいと思います。


【 参考 】

用語の定義について

~平成16年10月25日「特定商取引に関する法律第6条の2等の運用指針」より

誇大広告等:通信販売……において広告するときに、商品の性能、役務の効果、取引により得られる利益等について「著しく事実に相違する表示」、又は「実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤解させるような表示」

「著しく相違する表示」:社会一般に許容される程度を超えて、事実に相違する表示。

「実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」:社会一般に許容される誇張の程度を超えて、商品の性能、役務の効果、取引により得られる利益等が、実際のものより著しく優良等であると人を誤認させるような表示。

※表示内容全体から消費者等が受ける印象・認識が基準

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