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薬事法をひもとく

【第10回】その他、健食ビジネスの関連法令について(4)

(1)健康増進法について

■ 健康食品の販促において、気をつけなければならない法律は薬事法だけではありません。

■ 今回は健食関連法案のひとつである「健康増進法」について見ていきましょう。

1.健康増進法とは

従来、栄養改善法という法律があり、特保等の特別用途食品もその中に規定されていました。この法律は戦後の栄養失調の時代に作られた法律であり、今の時代に合わせるということで名前も内容も一新して出来たのが2002年制定の「健康増進法」です。この法律は国民保険の向上を図ることを目的としたものですが、2003年に改正されそれと共に厚労省が示したガイドライン(サプリメント等食品だけを対象)が以前に比べかなり厳しい内容を含んでいたため実務に大きな影響を与えています。

健康食品との関わりは以下の5項目になります。

(1)虚偽・誇大な表示の禁止について

(2)栄養成分や熱量に関する表示を行う場合の基準(栄養表示基準)

(3)特定保健用食品(特保)の許可・承認

(4)栄養成分の機能を表示する場合の基準(栄養機能食品)

(5)特別用途食品の許可・承認

この中で販促にかかわってくるのは(1)であり、過去の健康増進法の指導事例をご紹介したあとに解説をして参りたいと思います。

【2003年10月の指導】

~厚労省は21日までに、健康食品のインターネットでの販売宣伝に、製品とは無関係の「がんが治る」などとうたった書籍を利用するのは誇大広告を禁ずる健康増進法違反にあたるとして、健康食品の販売業者30社に対し、一斉に改善指導を行った。8月末に施行された、誇大広告禁止を盛り込んだ改正健康増進法をネット販売に適用したのは初めて。改善されない場合、厚労省が適正な広告をするよう勧告。従わないと措置命令、それでも是正されない場合は、6ヵ月以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。

改善指導の対象となった健康食品は、キノコ類やサメの軟骨、海藻の成分などを粉末にしたものだという。製品とともに、「医者に行かなくてもガンが治る!」などと表紙でうたっている健康食品の「バイブル本」を紹介したり、書籍のリンク先を掲載したりしていた。

厚生労働省によると、同じホームページ上で、直接関係のない製品と書籍を引用することは、販売商品を飲用すれば、書籍がうたうように「治療を受けなくても治癒が可能」だと一般消費者が誤認する恐れがあるとしている。改正法は、健康食品など食品全般の広告について、「著しく事実に相違する」「著しく人を誤認させる」ような虚偽、誇大広告の表示を禁じている。~

【2004年5月の指導】

~書籍で特定の健康食品を紹介し、その販売会社の連絡先を掲載したとして、厚労省は26日に都内の出版社1社及び健康食品販売会社、素材メーカー5社に対し健康増進法に基づく改善指導をした。健康食品の宣伝目的に出版する、いわゆる「バイブル本」と呼ばれる書籍を広告と判断し、掲載されている健康食品販売業者、素材メーカーの連絡先を削除するよう求めた。~

2004年5月、厚労省は健康増進法に抵触していたとして、いわゆる「バイブル本」自体を対象とした指導を出版社1社(史輝出版)、健食業者5社に対して行った。

2003年の改正法では、32条の2として「虚偽・誇大広告の禁止」規定をおきました。先ほども申し上げたとおり、販促面で一番かかわりが出てくる部分です。その条文は、以下の通りです。

「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他厚生労働省令で定める事項(以下「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない

また、ガイドラインによれば、3つの要件を満たすと違反として指導されることになりますので覚えておいてください。

(1)表現対象が健康保持増進効果であること

(2)表現形態が広告とみなされること

(3)表現内容が誤認を招く内容であること

*誤認を招くに該当する場合とは(例)

a. 医師の治療がなくても、ガン、糖尿病、心臓病等が治るといっている場合

b. 最上級の表現をしている場合~最高、絶対、日本一、抜群 etc.

c. 効果のデータを出しているがそれが臨床データ(人のデータ)でない場合

d. 学術データを引用しているが、科学的根拠として採りえない場合

e.××博士が学会発表したのはA社のアガリクスのデータであるのにそのデータをB社がアガリクスにはこういう効果があると発表されているとPR。

f. 体験談のでっち上げ、体験談の好都合箇所のみの抜粋

薬事法と健康増進法は立法目的が異なるので、重なる部分とずれる部分がありますが、実際的観点から言えば、薬事法がカバーしていないゾーンを健康増進法がカバーする関係になっています。ガイドラインが規定する「付近ルール」「あっせんルール」は、薬事法上のグレーゾーンを明確に違法としました。

次に、この「付近ルール」「あっせんルール」について簡単に説明致しましょう。

【 あっせんルール 】

03年7月に厚労省は留意事項という形で運用方針を示した。その中で、特定の食品又は成分の健康保持増進効果と、それに関する書籍の「お問合わせは○○相談室へ」等の記述の関係について、「○○相談室」が特定の販売業者をあっせん等していることが認められる場合、実質的に

(1)顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確にある事、

(2)特定食品の商品名等が明らかにされていること、

(3)一般人が認知できる状態にある事

に該当する場合は、その書籍等を広告等として取り扱うこととする。これが「あっせんルール」です。

【 付近ルール 】

ガイドラインでは、「書籍、冊子、ホームページに特定の食品又は成分に係る学術的解説を掲載する場合であっても、その解説の付近から特定食品の販売ページに容易にアクセスが可能である場合や、販売業者の連絡先が掲載されている等」の場合は健康増進法に該当する可能性があるとします。これが「付近ルール」です。前述の事例【2004年5月の指導】は付近ルールに抵触します。

さて、健康増進法を駆け足で見ていただきましたがいかがでしたでしょうか。

健康増進法には、「虚偽・誇大広告の禁止」という不実証広告規制が入っています。あれ、どこかで見た、と思った方は景表法や特商法を思い出されたかも知れません。消費者を守るため、公正取引委員会や経産省、厚労省それぞれの立場から「虚偽・誇大広告」は規制されているわけです。それだけ重要な課題となっているということでしょう。

また、健康増進法改正後、行政の指導はますます厳しくなり、以前は出来た販売手法が徐々に通用しなくなってきているようです。法令(通知含む)の改正動向・情報には十分な注意が必要です。

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