ドラッグストア研究会 松村清 最新USレポート 第12回 客を引き寄せる価格戦略

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ドラッグストア研究会 最新USレポート

第11回 客を引き寄せる価格戦略 

お客は「ディスカウントの理由」が知りたい 

「8割引」「9割引」の表示だけではダメ 

値引きに疑いを持つ イメージ

毛皮5割引きとか真珠6割引きセールという、大幅なディスカウントセールをよく見かける。健康食品にも5割引き、7割引きというものが多い。サンフランシスコやニューヨークでは、ニコンのカメラ9割引き、ソニーのステレオ8割引きというセールを行っている。このような大幅なディスカウント販促は、店に対するお客の不信感を増大させるだけである。お客は35%程度までの割引であれば「店の努力で安くした」と思うが、それ以上のディスカウント率になると、「定番価格がいい加減で儲け過ぎている」とか、「商品の品質が悪いのではないか」「店がつぶれるのではないか」「盗品ではないか」といった疑いを持つ。

一言説明する 「正直なお店 小さい正直・大きな信頼」を忘れない

大幅にディスカウントするときには、お客はその理由を知りたがっている。優秀なセールスマンはそれに対応して、「専門家にも見分けがつかない程度の小さなキズがあります」「モノは非常に良いのですが、昨年の商品なので・・・」というように、欠点を正直に述べて安く売っている。この方が理由がはっきりしているので信頼感が高まる。セルフサービスの店ではPOPなどでひと言説明する必要がある。「ほんのわずかな汚れがあるため、15%値引きにさせていただきます」というような説明が書いてあると、「正直な店」という印象を与え、お客の信頼を獲得できる。「小さな正直・大きな信頼」を忘れないことである。

 

お客が安心するフェアな表示とは 

米国の優秀な小売業を見ると、「TLC(テンポラリーローコストの略)で、メーカーから一定期間安く仕入れることが出来るので値引きしました」「店長の一大値引きです」「在庫処分のクリアランスセールです」「期末決算値引きです」「キズあり値引きです」「バンドルセール(まとめ売りの値引き)」など、割引の理由を説明するケースが多い。その方がお客も安心するし、フェアだと感じるからだ。

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ロサンゼルスのウエアハウス・ワインショップは、時折ある銘柄を市場価格よりはるかに安い価格で提供するので、ワイン愛好家には評判の店である。「非常にお薦めできるワインなので、人気が出る前にワイナリーから大量に仕入れました。そのためこのディスカウント価格で提供できます」とPOPに書いてお客に安心感を与えている。ウォルグリーンでも「TLC」というPOPを幾つかの商品に付けているが、「これはメーカーとの契約で特別に安く仕入れることができた商品です。そのため数ヶ月間、このようなお得な価格で提供できるのです」と説明している。値上げする場合も同じである。なぜ価格を上げるのか、理由をきっちり述べないと、お客は「フェアでない」と思い、店から離れていく。

価格が気になるのは200品目くらい 

「安売り」にもイメージ作りが大切 

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流行る店は「安い」イメージ作りが上手である。エブリデーロープライス戦略をとり、最低価格保証(自社より安い店があれば、その店の値段に合わせる制度)を実施しているウォルマートでも、アイオワ大学のビジネススクールで価格調査をしたところ、8万アイテムのうち実際に最低価格であったのはわずか600アイテムだったという。スーパーマーケットセーフウエイは、お客が価格を気にするのは200アイテムまでであり、それ以上のアイテムを安くしても無駄な安売りになると考え、チラシに入れる商品も200程度にしている。

チラシを活用するのは、ハロープライシング(ハロー戦略)を取っているからである。買い物頻度が高く価格に敏感な商品を安くすることにより、店全体の価格が「安い」とか「お買い得の店」というイメージをつくる戦略である。 逆に、価格に敏感でない商品には高い利益率を乗せ、充分な利益を取って粗利ミックスをしている。
価格に対する敏感性は、お客の属性・商品の性格・ブランド価値によって大きく異なる。一般に可処分所得の高い人や教育レベルの高い人、世帯構成人数が少ない世帯、多忙な人ほど価格に対して鈍感である。また、好みにこだわる商品(エゴ商品)ほど鈍感で、逆にトイレットペーパーや洗剤や牛乳など、どちらかというと好みにこだわりのない商品(ノン・エゴ商品)ほど敏感になる。また、コカ・コーラのケース売りやシャンプーのポンプサイズなど、パッケージの大きい商品は価格に対して敏感になり、1本売りやパッケージの小さい商品ほど価格に対して鈍感になる。

 

客を放さない「安さ」のコントロール術 

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ウォルグリーンでは、お客はLowest Price(最低価格)を求めているのではない、Fair Price(信頼できる値頃価格)を求めているのだと考えている。ウォルマートの大躍進を見て、「価格では勝てない」と判断し、1980年代にフェアプライス戦略に切り替えた。しかし、価格が「高い」イメージを与えたのではお客が店から離れてしまうので、「安い」イメージ創りのために、商圏単位ごとに1カテゴリーの中で1〜2種類の商品は最低価格のベストプライス(但しウォルマートは比較対象外)で提供し、販売個数で上位3分の1の商品は競合店と価格を合わせ、残る3分の2の商品は高粗利益を取る価格戦略を取った。又ウォルグリーンでは、清涼飲料水、たばこ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ガムなど、典型的なまとめ売りの商品について1個売りに徹している。まとめ売り価格ではウォルマートよりはるかに高くなり、店のイメージが「高い」になってしまって売れない。それを避けるために、1個売りに徹しているのだ。トイレットペーパーやティッシュペーパーを1個売りにしているのは、日本の小売業の常識にはないやり方だろう。

 

高額商品を売るための法則 

高価格品は「細分化」して気楽に買いたい 

細分化の法則 1本当たりの価格を高いと感じる

商品や店舗イメージを高めるため、意図的に高い価格を設定することがある。「高い」ことが、品質が良い、おいしい、夢がある、信頼がおけるといった効果をもたらすからである。これを「価格威光効果」という。高級ブランド品、宝石・貴金属店、ハイファッション店、高級化粧品、高級レストランや料亭がそうである。エルメスのケリーバッグが5000円、バテックの時計が1万円、接待に使う高級料亭のメニューが3000円では、お客の夢や信頼感を損ない、その店に行く魅力が失せてしまう。価格は安ければよいというものではない。
また、ディスカウントして販売するとき、値札に今までの価格が書かれ、新しいディスカウント価格を併記するのも、比較ポイントを見せている。他店の価格と比べたPOPも比較を見せているのである。店で行っているプログラムをより魅力あるものにするためには、この「比較ポイント」というアンカーの役割が非常に大切である。

高額品を売るときのコツの一つに「細分化の法則」がある。人間は「大きい」ものに対する抵抗感は大きいが、「小さい」ものに対する抵抗感は小さい。 例えば、大型サイズやまとめ売りには抵抗感が大きいので、価格を気にする。シャンプーのポンプサイズにはディスカウント価格を期待する客も、トラベル用の小さいサイズの値段はあまり気にしない。1本150円のドリンク剤が、10本入りだと1090円、1本当たり109円で高いと感じるお客が、1本145円のバラ売りにすると気にせずに買っていく。これを心理学では「細分化の法則」と呼んでいる。

 

法則の実践例 

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高額品を売るコツは、この法則を活用することだ。例えば、価格が張る腕時計やゴルフ道具をプロパー価格のままで売れば「高い」という印象を与え、お客に見向きもされないが、「細分化の法則」を活用して、「30万円の腕時計を30年間使用したとして、年間1万円、月833円、1日27円、1時間1円22銭の投資で充実した生活をお楽しみ下さい」とアプローチすると、「高い」という意識が失せてしまうだろう。

 

レイ・アダムスというローカルの家電ディスカウントチェーンは、三菱、ソニー、東芝などの50インチの大画面のテレビセットを次のような方法で販売している。「通常1599ドルを1299ドルにディスカウントします。しかもNo Payment! No Interest!!! One Year Free(今買っても今払わなくてよいです。頭金も要りません。金利も要りません。だから、1年間無料で使用できます)」これも「細分化の法則」である。1599ドルといわれたらしり込みするお客も、「1299ドルにディスカウントされ、頭金も要らなければ、金利もかからない、しかも支払いは1年後から」と言われれば、大型テレビに抱く高額品というイメージは細分化されて、購入しやすい気持ちになる。保険会社が1日約146円の保険料で日額1万円の入院給付金という宣伝をしていた。1年間にすれば5万3000円強になるが、1日146円といえば安く感じる。これも「細分化の法則」の活用である。

 
 
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プロフィール

ドラッグストア研究会松村清会長
ドラッグストア研究会
松村 清 会長 (まつむら きよし)
 

Excell-Kドラッグストア研究会(http://www.drugstore-kenkyukai.co.jp/)、Excell-K薬剤師セミナー、及びExcell-Kコンサルティンググループを率いる流通コンサルティング会社Excell-K(株)ドムス・インターナショナルの代表者。小売業、卸店、メーカーに対するコンサルテーションをはじめ、講演、執筆、流通視察セミナーのコーディネーターとして活躍。特にドラッグストア開発、ロイヤルカスタマー作り、シニアマーケティングのための実務と理論に精通し、指導と研究では第一人者。年間半年を米国で生活し、消費者の目・プロの目を通して最新且つ正確な情報を提供しながら、国内外における視察・セミナー・講演を精力的にこなす。

日本コカ・コーラ(株)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)を経て独立('90)。慶応義塾大学卒(法学)、ミズリ―バレーカレッジ卒(経済)、サンタクララ大学院卒(MBA)。東京都出身。

CVS

■全米No.1のドラッグストア ウォルグリーン

主な書籍
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
セールス心理学―「No!」と言わせない商談必勝法
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 221P
サイズ 四六判
 
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
ウォルグリーン―世界No.1のドラッグストア
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 295P
サイズ 四六判
 
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
シニアカスタマー―中高年に好かれる企業が市場を制する!
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 212P
サイズ 四六判
 
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
サービスの心理学―心に染みるエピソード集
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 239P
サイズ 四六判
 
目からウロコ 販売心理学93の法則
目からウロコ 販売心理学93の法則
松村 清 著
商業界 版
単行本
ページ 247P
サイズ A5ソフトカバー
 
・「ニューシニア(50歳以上)をつかまえろ!!
・「 売上げと利益を運ぶロイヤルカスタマー
・「最強のドラッグストア ウォルグリーン
・「 米国ドラッグストア研究
(以上、商業界刊)。

バックナンバー

第25回 体の衰えとエイジフレンドリーな対応

第24回 心のつながり(ハイタッチ)

第23回 「ドラッグストア業態争奪戦」(Part供

第22回 「ドラッグストア業態争奪戦」(Part機

第21回 お客の欲求段階により大きく変化する品揃え

第20回 繁盛店はユニバーサルデザインとソフトのバリアフリーの両方を提供

第19回 シニアはわがままを聞いてくれる店が好きだ

第18回 シニアはシニアと呼ばれるのを嫌う

第17回 返報性の法則が大きく働く高齢社会

第16回 ロイヤルカスタマー作りはホスピタルティーがカギ

第15回 お客様は愚かな買い物を嫌う、賢い買い物をしたい

第14回 POPはサイレントセールスマン

第13回 “Rich Enjoy Discount, Poor Need Discount”

第12回 お客様は誰でもお得な買い物をしたい

第11回 価格に対する消費者心理の摩訶不思議

第10回 ゴンドラエンドは売り場の華

第9回 お客様に好かれる陳列の工夫

第8回 顧客の信頼を獲得するなら屋作り

第7回 有効なマーケティング手法になる音と香り

第6回 ゴールデンエイジ攻略の鉄則

第5回 少子高齢化のマーケティング

第4回 非計画購買が店舗に売上げ・利益をもたらす

第3回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 Part

第2回 ウォルグリーンが激しい異業態間競合を生き残れた理由 Part

第1回 心理学を利用した利益を上げるレイアウト

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