この人に聞く 健康・美容業界のキーマン NPO法人日本エステティック機構 理事長代行  奥野 貴司

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エステ業界の淘汰が進行している。店舗数の飽和に加え、消費者からの信用下落、さらに法改正などが背景にある。
そうした中、業界健全化などを使命に認証制度の策定と運営を行う第三者認証機関として2004年に発足したNPO法人日本エステティック機構は、2009年、第1回目の認証の判定を終え、春から2回目の申請受付をスタートした。同機構・理事長の奥野貴司氏にその現状や展望について聞いた。

淘汰が進むエステ業界の現状と再生への道のり 

エステ業界停滞の背景とは

――世界不況の余波で全体的に景気は停滞気味ですが、健康美容業界ではとりわけエステ業界の苦境が目立っている気がいたします。

奥野 貴司氏写真

さまざまな負の要因が積み重なって、確かに厳しい状況にあるとは思います。そもそも、エステというのは、非常にイージーなビジネスでした。参入障壁が低く、誰でも簡単に始められる。それでもお客もお金も集まってしまう。長年それに安住してきたツケが回ってきたという感じでしょうか。もちろん、しっかりとしたコンセプトを持ったサロンも育ってきたのですが、この業界は新しいだけに、周囲の業態を見回してから行動するタイプの経営者が多く、エステの本質を目指すビジネスより、利益を目指すビジネスに目が行ってしまう傾向もあったことは否めません。一方で、簡単に始められるがゆえに異業種からの参入も多く、単純な儲け主義が増殖し、消費者の信頼を損なってしまう悪質なサービスでイメージをダウンさせたのが大きな理由ではないかと思っています。

――顧客側もエステビジネスの状況をしっかり見回して行動を起こしているわけですね。

どうしても悪評は目立ってしまいます。特にエステへ来るお客様はきれいになることが目的ですから、その反動は大きい。たとえば、バイトレベルのスタッフが光脱毛施術を行う。あるいは、「永久保証の光脱毛」だとか、「1日で痩せます」と誇大な情報を流す。また、お試しコースと称して誘った顧客に高い契約を勧める、といったことなどですね。これではお客様が満足するわけありません。今日明日のことだけを考えて運営したのでは長期的に安定したビジネスにはなりません。必ず顧客は離れて行き、その情報は潜在顧客にまで影響を与えます。

経営者と末端にある意識の差

――機構では申請があったサロンの審査を実施。審査スタッフが全国の店舗を視察しました。初年度の昨年1年で目にしたその“実態”はいかがでしたか。

奥野 貴司氏写真 経営者と従業員の間の意思の疎通が不十分だ、という印象はあります。つまり、トップが志を持っていても末端まで伝わっていない例がありました。これは技術者であるエステティシャンとコンプライアンスを守る立場の経営者の違いも要因でしょうが、そもそも「なぜそういうことが問題なのか」という意識と理解のレベルの低いところもみられました。ただし、そういった実情を分かった上で、認証制度に申請し、意識づけや社内教育のきっかけにしようというサロンが多くみられたのは、制度の意義を考えてもいい傾向だと感じました。実際、申請することで従業員のモチベーションが上がった、というサロンの声も耳に入っています。

――意識レベルの低さについてご指摘がありましたが、全業態の中でもエステは特にクレームの件数が目立つ部類に入ります。

確かに言い訳もできないクレームもありますが、多くの顧客が若い女性というのが無関係とはいえないと思います。例えば、店舗選びの参考にされることの多いネットなどへの書き込みを見ると、エステティシャンの容姿のことや性格のことだったりする場合もあり、そういったものが一人歩きして、店舗の正当な評価を乱し、クレームにするようなことでなくても顕在化することもあるようです。しかしそれらを含めて対応するのが本当のサービスですから、クレームが多いことは問題であると意識すべきでしょう。

苦境の突破口はどこにあるのか

――店舗、顧客、イメージ、さらに法改正も含めエステを取り巻く環境は、課題が山積ですね。一体、どうすれば、この状況を打破できるのでしょう。

一度落ちたイメージを上げるのは並大抵のことではありません。ただ、エステティックサロンの良否について消費者の判断材料が少ないといった部分が健全化の足かせになっている面は否めないと思います。そのために消費者に対し、良し悪しを明確に判断できる客観的な情報を出していかなければいけない。それを担うのが、認証制度であり認証マークだと考えています。

――認証の基準は非常に厳しく設定されており、業界浄化への意志の強さが伝わってきます。

この認証制度は単にサロンの黒白を判定するだけでなく、グレーな部分のあるサロンをシロにすべく、機能していきたいと思っています。残念ながら初年度に関しては、認証申請サロンの数は目標には及びませんでしたが、すでに認証マークを取得したサロンからは「従業員のモラルが上がった」「新規顧客の開拓につながった」という声もいただいており、それは今後の認証マークの普及を考えても非常に意義のあることで喜ばしい声だと思っています。

――第1回目の認証制度の判定結果は申請受理サロン数462(事業者数71社)に対し、54.5%となる252サロンが認証。申請サロン数は、数字だけを見ると、確かに厳しい結果でしたね。

奥野 貴司氏写真

1回目ということでいろいろと手探りの部分はありました。その結果、申請に際し、手続き事務量や申請料など負担が多いことなどが起因となって、思った以上に申請数が伸びませんでした。しかし、この経験によって改善点もハッキリと見えてきました。そこで2009年4月よりスタートした2回目の申請では煩雑すぎた事務的負担の軽減、費用負担の軽減などを実施。申請するサロンの負担をできる限り軽減し、さらに我々としても制度の存在理由の理解度と認知度アップにこれまで以上に尽力しながら母数の拡大を図っていきたいと考えています。あのISOですら一般化するまで7年かかったといわれています。このエステティックサロン認証制度はまだ1回目が終わったばかりです。長い目で育てていきたいと思っています。

認証制度の普及がエステ業界の浮沈を担う

――せっかくの素晴らしい制度ですが、法的拘束力がない、という点が普及の足かせになっているとの見方もあります。

奥野 貴司氏写真

法による規制は両刃の剣と考えています。つまり業界にとって良いことばかりではなさそうです。さらに現実的なことをいえば、多種多様なエステティックサロンの業務状況の現状で規制をかけていくとして、それを実行、推進していけるだけの政治力、行政力が提供されるとは思えません。だからこそ、この認証制度をしっかりと普及させていくことが業界にとって重要だと思っています。ちなみに、苦情件数についてですが、日本エステティック振興協議会相談センターの最新のデータによれば前年の60%と大幅に減っています。しかも内訳についてはサロンの倒産・閉鎖に関するものが最も多くなっています。これはサービス面においては各サロンが着実に健全化しつつある証といえます。しかし一方では、それだけ顧客が減少傾向であるととらえる必要もあると考えます。

――最後に日本エステティック機構としての今後の展望をお聞かせ下さい。

奥野 貴司氏写真

機構は、玉石混交のサロンの実態を鑑み、消費者が安心してエステティックサービスを受けられる仕組みを早期に導入すべき、との観点から認証制度の策定と運営を行う機関として設立されました。それは消費者保護の側面はもちろんですが、サービス提供側の意識をあげる、という意味合いも同時に含んでいます。ですから、一軒でも多くの店舗に申請いただき、最終的に認証マークが業界スタンダードになることが一番の目標です。つまり「あの店舗は認証マークがついていたからさすがにしっかりしていた」といったような形で、一般にもしっかりと認知されるものにならなければと感じています。そのためにはとにかく母数を増やすことが、何より重要となります。しかし実は申請を希望しているサロンで予測した以上に多いのがレーザー・光脱毛を施術しているサロン。これは諸問題があり、現在は申請を留保させていただいていますが、なんとか今年中に解決の行方を想定できるようにしたいと思っています。またすでにスタートしているエステティックサロンおよびエステティック機器に加え、エステティシャンの認証もスタートの準備段階です。申請への負担軽減を図った今年はさらなる申請拡大が期待されますし、さらに来年以降は、認証制度の土壌がしっかりと整います。まずは今年700サロンの認証達成を目指し、安心安全なエステサロンへの明確な道しるべを描いて行きたいと思っています。

プロフィール

日本エステティック機構
理事長
奥野 貴司 (おくの たかし)

プロフィール

昭和10年6月1日 東京都生まれ。
慶應義塾大学卒業。
一貫して、マーケティングコミュニケーションについて研究。
株式会社読売広告社 取締役 クリエイティブ局長を経て、
現在、日本エステティック振興協議会 理事長、
日本エステティック業協会 理事長。
08年より NPO法人日本エステティック機構の理事長代行を務める。
09年より、同理事長に就任。

会社概要
NPO法人日本エステティック機構

【日本エステティック機構】

URL
http://esthe-npo.org/

平成15年3月に経産省が行った「エステティック産業の適正化に関する検討会」の報告書を受け、準備委員会を設置、議論を重ね、エステティックサロンの認証、エステティシャン養成制度の認証を行う第三者機関として、2004年5月に設立された。認証制度は2008年にサロン認証に続き、機器認証ががスタート。2009年1月に1回目の判定結果が報告された。4月からは2回目の申請受付がスタートしている。

エステ関連法規について

薬事法、衛生法規、公衆浴場法、消費者契約法、特定商取引法などがある。2008年6月には、特商法および割賦販売法が改正され、過量販売による契約の解除、個別クレジットを行う業者の登録制などが義務付けられた。

インフォメーション

5月20日 11:50〜12:40 に東京ビックサイトで開催される 「ビューティーワールドジャパン」のメインステージにて 「エステティック認証制度 〜より安心・安全なエステティックを目指して〜」 と題しセミナーを開催する。参加費は無料。(招待状をお持ちでない方は、 ビューティーワールドへの入場料として別途¥3,000がかかります) 【終了しています】

第二回エステティックサロン認証制度
説明会

5月21日:剛堂会館(東京都千代田区)
6月9日:名古屋丸の内東急イン(愛知県名古屋市)
6月10日:ヒルトンプラザ ウエスト オフィスタワー8F(大阪府大阪市)
6月11日:金沢マンテンホテル(石川県金沢市)

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第13回 消費者庁設立にうろたえないための心構え
第14回 激動のドラッグストアが向かう進路とは
第11回 現役東大生でサプリメント会社社長の戦略とは
第12回 なぜ日本ではサプリメントが有効に機能しないのか
第9回 淘汰が進むエステ業界の現状と復調へのシナリオ
第10回 医薬品のネット販売はなぜ規制されるのか
第7回 ネットと連動した健康データ管理ビジネスの可能性
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