
【協会概要】
会長 :池森賢二/(株)ファンケル名誉会長
副会長:塚原菊一/ドーマー(株)代表取締役社長
「発芽玄米」の製造元各社を中心に2004年に創設。「発芽玄米」の情報発信および啓蒙活動などを行うために発足した任意団体。正会員企業は(株)ファンケル、ドーマー(株)、岐阜パールライス(株)、尾西食品(株)ほか。
【プロフィール】
シンクタンク、食品メーカーにて経営に従事し、2004年2月に「日本発芽玄米協会」事務局長就任。(株)ファンケル健康食品本部機能食品部長、発芽米事業本部、同副本部長を経て、2006年6月よりヘルスケア事業本部・本部長現職。同社では栄養価はそのままにより白米に近い発芽玄米を上市。そのほかにも発芽玄米を原料とした加工食品を多数手掛けている。
玄米は古くから食されていたが、稲穂が水に浸かるなどして発芽してしまった玄米は味が悪いとされ、くず米扱いで飼料・加工食品の原料としての使途しかなかった。しかし近年、農作物の栄養価低下などが指摘されはじめ、食品本来の栄養価に関する研究が活発化。発芽玄米に関しても同様に“発芽するということはそこになんらかの栄養成分がある”と考えた複数の企業が研究を進め、家庭の炊飯器で炊ける加工技術の開発に着手した。そして白米や玄米よりも栄養価の高い発芽玄米の商品化が進み、1999年にドーマー(株)(本社長野県上田市)が真空パックで発芽玄米を上市。(株)ファンケル(本社神奈川県横浜市)も2000年にウェットタイプ、2001年にドライタイプの発芽玄米を上市した。
「はじめは弊社(ファンケル)の事業コンセプトである“内外美容”を考える上で、サプリメントで栄養素を補う前に毎日の食事、主食となるものに目を向けるべきなのではないか、という点に着目したのがきっかけでした。特に食歴が長く、日本の食文化を語るときに“米の歴史”ははずせないものですし、日々の食卓を見つめることからまず取り組みたいという思いがありました。外食の選択肢も増え、欧米型の食習慣が都市部以外でも浸透している現在、日本古来の食文化は壊れてしまっています。お米の総消費量はずっと下降し続けており、昭和38年頃に比較するとおそらく5分の1くらいに減ってしまっています。今後さらに高齢化が進むことからもひとりあたりが口にする量が減ることが懸念され、米の消費量が増える要素は少ないと感じています。食の多様化自体は悪いことではありませんが、食材としてカラダにいいものばかりではありません。食の欧米化が進んで脂質の過剰摂取などにより栄養バランスが崩れ、肥満からメタボリックシンドローム、そして生活習慣病予備軍などカラダに何らかの症状が現れている“半病人”ばかりが増えています。だからこそ今、自ら積極的に健康を手に入れていこう、という発想にたどり着く必要があるのではないかと思います。

その手段のひとつとして、発芽玄米をもっと身近な食品、毎日食卓に並べられる主食として選択してもらえるように協会から情報発信をしていきたい。発芽玄米の認知度は低くありませんが、その健康効果についてはまだまだ知られていない部分もあります。発芽した胚芽の部分は米に含まれる酵素が最大限に活性化された状態となっているため、発芽玄米は大変栄養価の高い食品です。たとえば今話題の成分の“GABA(ギャバ)”と呼ばれる“γ-アミノ酪酸”が白米の約10倍、玄米の約3倍も含まれ、そのほか食物繊維、ミネラル、ビタミンなど多くの栄養素を含んでいることがわかっています。“GABA”という成分が注目されるようになったことは、発芽玄米の市場拡大とリンクしています。このような発芽玄米の健康効果についてもっと知ってもらって、日々の食卓から始めるヘルスマネージメントに役立ててほしい。そして結果的に少しでも生活習慣病予備軍や“半病人”を減らし、日本の医療費削減に貢献することができればいいと考えています」
日本発芽玄米協会が活動目的として挙げているものは「米及び発芽玄米の消費促進活動」、「発芽玄米の品質及び安全性の向上に関する調査研究」、「品質表示基準等の整備」、「生産技術向上、加工適正の向上に関する技術研究」、「発芽玄米の機能性解明技術の開発」などである。発芽玄米の機能性食品としての可能性や研究成果は各種学会やシンポジウムでも発表され、今後もさらなる研究が進められていく食品だ。こうした研究成果を国内のみならず、海外に向けて情報発信していきたいという。
「情報発信と同様に重要なのは、日本の加工技術によって生まれた発芽玄米をグローバルに認知度を高めていくことです。『国際コメ年2004 世界イネ研究会議』では日本発芽玄米協会主催のシンポジウムを開催し、発芽玄米を中心とした玄米の有効成分とその機能について、大学教授や医療機関の研究者を招いたワークショップを企画しました。これからも機会があればこうした活動を行っていきたいと考えています。また機能性食品としてのエビデンスも得られるようになってきており、発芽玄米が低GI食品(食後の血糖上昇が緩やかな食品)であることや、高コレステロール血症抑制作用が認められること、発芽玄米長期摂取による糖尿病患者の血糖値異常の改善作用があることなどが肥満学会や日本栄養・食糧学会などで発表されています。糖尿病などで食事制限を余儀なくされている方や肥満、メタボリックシンドロームが疑われる人々からは、発芽玄米がもたらす健康効果の効果実感が多数寄せられています。こうした消費者の期待に応えるためにも発芽玄米の機能性の作用機序を解明し、できるだけ多くのエビデンスを取得していかなければなりません。ファンケル総合研究所でも農水省の研究助成を受けて発芽玄米の抗ストレス・抗うつ様作用について研究を進め、今年3月に農水省が主催した『米加工品需要開発技術推進発表会』でその有用性に関する研究データを発表しました。この研究は脳内の神経伝達物質との関わりから、発芽玄米含有成分がストレス耐性のメカニズムにどのように働きかけるかという研究。製薬におけるスクリーニングと同じテスト手法を用いて得られた結果で、従業員のための給食や子供のための学校給食などの関係者から、注目を集める結果となりました。今後、ヒト臨床に関して検討する段階に入ってきています。

そのほかにも発芽玄米の含有成分である“イノシトール”(ビタミンB群の一種)と“IP6(フィチン酸)”は同時に摂取するとナチュラルキラー細胞の活性化、抗酸化作用、抗がん作用のあることが米国の学会で発表されていますし、研究が進むごとに新たな機能性が発見される大いなる可能性を秘めた食品です。発芽玄米を中心とした“米の機能性”に関しての研究は、世界中の研究者たちによって今も進められていますし、もちろん国内でもさらに研究が重ねられていくと思います」
発芽玄米市場は発売から数年経った2003年にピークを迎え150億円という市場となったものの、その後はブームが去って下降傾向に。しかし今年になって“GABA”などの機能性栄養成分にスポットが当たり、テレビで取り上げられるなど注目度が高まってマーケットは上向きに転じたという。
「2003年のピークは健康ブームの“走り”のようなもので、トレンドに敏感な人たちは少し経つと飽きてしまって、ほかの食品やサプリメントに気持ちが移ってしまったのでしょう。翌2004年には下降傾向となってしまいました。日本人は米の食歴が長いため米の味に関してハードルが高く、米の味覚基準を誰もが持っているため、食感も味も改善を重ねていく必要もありました。現在ではメーカーの努力で品質も味も格段によくなり、さまざまな銘柄発芽玄米や加工米飯、さらに原料として玄米の需要も伸びて今年は120億円強の市場となりそうです。米が身近なものであることと、過去に食べた経験がある人には訴求しやすいという部分がほかの健康食品に比較しても強みといえるかもしれません。
しかし今いちばん問題なのは一般の米との価格格差(通常の米価格の約2倍)。発芽玄米は加工食品なので、米の価格に加工マージンが上乗せされるため仕方がないのですが、値段が高いということはすなわち、直接消費者に負担を強いることになってしまいます。適正価格を実現するために発芽玄米協会が先頭に立って米行政やメーカーと交渉を重ねながら、少しでも安い価格で消費者の皆さんに提供できるように働きかけをしているところです。ファンケルがこの協会のリーダーシップをとることとなった理由は発芽玄米市場のシェアを握っていたからでもあり、その責務を果たしていかねばなりません。そのためには米行政、メーカー、消費者の3方向の架け橋になれるような活動が非常に大切だと考えています。
またわたくしどもが重要視していることのひとつに、健全な食生活の崩壊に歯止めをかけたい、ということがあります。メタボリックシンドロームなどの予防も重要ですが、食習慣の乱れは子供の“食育”にも大きな影を投げかけています。家族と食卓を囲む機会が減り、家族がそろって毎日夕食を摂る割合は1976年の36.5%から2004年には25.9%にまで低下しています。ヒトにとって“食べる”行為はエネルギーの源であり、適切な食事を摂ることは人間性の育成にもつながります。わたくしどもは発芽玄米の健康効果をアピールすると同時に、栄養バランスのとれたメニューの提案や学校給食への導入など“食育”の現場にも積極的にかかわり、子供たちに適切な食生活のためのアイデアを提供していきたい。たとえば『噛み噛み給食』という提案型のメニューが栄養士さんたちの試みとしてあるのですが、よく噛んで食べる食材として発芽玄米も採用してもらいっています。

さらに高齢化社会における課題にも取り組みたいという思いもあります。高齢者は排便機能が低下しがちなのですが、発芽玄米には食物繊維が豊富に含まれていますので、腸内環境を整える食品としても非常に優れています。このような特性をもっと知ってもらうために情報発信だけにとどまらず、消費者参加型の企画も提供していきたいと考えています」
市場が上向きになっている今をチャンスと捉え、早急に価格を普通の米と同じくらいまで下げ、消費者にメリットを還元することが最優先課題だという鴇田事務局長。発芽玄米の需要を現在の150〜200%に伸ばし、“21世紀の健康食”として食卓の主役に定着していってほしい、とその展望を述べて話を締めくくった。